2016 Fiscal Year Annual Research Report
脆性破壊の伝播・停止現象の力学モデル確立と長大亀裂問題の解明
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15H05561
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柴沼 一樹 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30611826)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 破壊力学 / 脆性破壊 / アレスト靭性 / 高速亀裂伝播 / 破壊応力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,脆性破壊の伝播・停止挙動を定量的に再現可能な力学モデルを確立し,40年以上未解決である長大亀裂問題の物理的根拠を明らかにすることである.研究2年度目では,主に素過程モデルを統合化することで,脆性亀裂の伝播・停止挙動を三眼するための基礎モデル構築と,既存の実験データを用いたその妥当性検証を行った. 具体的には,(a)局所限界破壊応力に基づく破壊条件,(b)弾塑性構成式に基づく接線係数,(c)温度・ひずみ速度依存性を考慮した降伏応力,(d)動的応力拡大係数,をそれぞれ記述する定式化を連立し,繰り返し計算によって脆性亀裂伝播を再現するモデルの枠組みを構築した.特に,動的応力拡大係数の定式化においては亀裂伝播に伴う駆動力の増加によって板表面部の塑性拘束が緩和し,結果として未破断のサイドリガメントが成長,結果的に亀裂の閉口効果を発揮する効果を組み込んだ. 標準幅温度勾配型アレスト試験および超広幅の混成型アレスト試験に関する過去の実験データとの比較によるモデルの妥当性検証を行った.その結果,従来の理論やモデルでは不可能であった長大亀裂条件下および高負荷応力条件下において亀裂が早期にアレストする現象が再現された. 特に,混成型アレスト試験における長大亀裂に関しては,助走板から試験板への亀裂突入後,即時に伝播あるいは停止となるわけではなく,数百mm程度伝播が継続した後に停止するという遷移領域が存在することが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数の素過程モデルを統合化した全体モデルを構築し,それによって従来説明困難であった長大亀裂を含めた脆性亀裂の伝播・停止挙動を説明可能なモデル体系の枠組みを予定を前倒しして確立することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は今年度の成果を基礎として,昨年度実施した局所限界破壊応力の実測結果などを考慮した素過程モデルの精緻化を行う.また,サイドリガメントが動的に伝播する亀裂に及ぼす閉口効果についても,負荷応力・温度を変化させた複数の実験を実施し,定量化することでモデルの高精度化に向けた知見を取得する予定である. 一方で,高速亀裂伝播における局所応力を高精度かつロバストに評価可能な有限要素解析手法についても検証を進める予定である.
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Research Products
(4 results)