2015 Fiscal Year Annual Research Report
北太平洋におけるアカウミガメ個体群の集団構造に基づく保全管理単位の提言
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15H05584
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Research Institution | Japan Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
奥山 隼一 国立研究開発法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (80452316)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ウミガメ / バイオロギング / 衛星追跡 / 回遊多型 / 安定同位体 / 保全生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象種であるアカウミガメは、国際自然保護連合が絶滅危惧種に指定している希少種である。北太平洋に棲息するアカウミガメは、南太平洋の個体群とは独立しており、日本列島が北太平洋唯一の産卵地である。海浜で孵化した幼体は黒潮・黒潮続流などの海流に乗り受動的に拡散し、カルフォルニア浅海域に加入、成長の後、産卵のために再び日本へ回帰すると考えられている。産卵後のアカウミガメの生活史タイプには東シナ海で採餌を行う浅海型と西部北太平洋で採餌を行う外洋型の2タイプあることが知られているが、これらの知見は、屋久島以北の産卵個体群の研究結果によってもたらされたものであり、奄美群島以南の個体群の生態的・遺伝的特徴についてはほとんど明らかにされていない。本研究では、衛星対応型発信機による行動追跡、安定同位体比を用いた食性履歴分析、遺伝子解析による遺伝構造の把握の3種の手法を包括的に用い、奄美群島以南のアカウミガメ産卵個体群の生態的・遺伝的特徴を明らかにすることを目的とした。それらの情報と先行研究の知見に基づき、北太平洋におけるアカウミガメ個体群の適切な保全管理単位の提言を行なう。 本研究は、絶滅が危惧されるアカウミガメの保全策を講じる際の科学的根拠となるばかりでなく、浅海型・外洋型といった生活史多型の形成機構の解明にもつながる。生活史多型はサケ科魚類だけでなく、近年ウナギやマグロなどの重要水産魚種でも確認されており、本研究は海洋における生活史多型形成機構解明の先駆的研究になりえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の全体的な問題点は特になく、計画通り遂行している。平成27年度は、奄美群島以南の産卵調査地として、石垣島、沖永良部島、徳之島を選定した。平成27年5月末~7月初旬において、調査地においてアカウミガメ産卵個体の生態調査を実施した。調査では、産卵個体の甲長を計測し、安定同位体比解析、遺伝子解析用の組織サンプルを取得した。本年度は日本全国的にアカウミガメの産卵上陸数が少ない年であったものの、合計15個体からサンプルを取得した。今後、実験室において分析を行っていく予定である。産卵後の回遊追跡に用いる衛星対応型発信機については、予定通り発注作業を行ったが、納品された際には既にウミガメの産卵期が終了していたため追跡実験は実施していない。納品された発信機は平成28年度の調査で使用予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の昨年度と同様に、石垣島、沖永良部島、徳之島において産卵個体の調査を実施する。また新たな調査地として、アカウミガメの産卵地北限にある千葉県での調査も検討している。今年度は安定同位体比解析、遺伝子解析用の組織サンプルを取得するだけでなく、10個体を選定し、衛星対応型発信機を装着し、産卵後の回遊経路・索餌場を明らかにする予定である。また、黒潮流域で受動的に回遊していると考えられるアカウミガメ幼体の生態調査も試験的に実施し、幼体の回遊過程を明らかにする。
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Research Products
(1 results)