2016 Fiscal Year Annual Research Report
光化学系II膜蛋白質のpHトラップによるS2反応中間体の結晶構造解析
Project/Area Number |
15H05588
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
梅名 泰史 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(准教授) (10468267)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | X線結晶構造解析 / 光化学系II蛋白質 / 光合成 / 膜蛋白質結晶化 / 混合緩衝液 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物や藻類で行われる酸素発生型光合成反応で働く光化学系II蛋白質(PSII)は光エネルギーを使って水を酸化分解して化学エネルギーの生産に必要な電子源を作り出している。本研究では好熱性シアノバクテリアThermosynechoccous vulcanus(TV細胞) 由来のPSIIを精製・結晶化し、結晶母液のpHを変えることで起こるアミノ酸残基の構造変化や水分子の位置の違いからPSIIの機能部位における最適な構造について検証し、PSIIの水素イオン濃度(pH)に依存した機構の解明を研究の目的としている。 初年度の研究で、PSIIの結晶化試料の調製法を確立する事ができたため、PSII結晶を様々な市販の結晶化溶液で結晶化を試みたところ、pH4からpH9の範囲で単結晶を得ることが分かった。本年度ではさらに条件を突き詰めるため、PSII結晶を大量に調製し、結晶母液の緩衝液を変えてPSIIのpH可変による結晶構造解析を試みた。しかし、酸性側の溶液としてクエン酸緩衝液および酢酸緩衝液を試みたが、十分な分解能の回折データを得ることができなかった。pHおよび緩衝液の種類の変化による結晶性の低下を止めることができなかったと思われる。一方グルタミン酸緩衝液を用いた場合、pH5では水分子の位置やアミノ酸側鎖の構造を捉えることができる2.2Å分解能の回折データが得られた。 上記の問題から、緩衝液を変えることなくpHを変化させるため、マロン酸、イミダゾール、ホウ酸の混合緩衝液を実験に用いたところ、中性付近で1.9Å分解能の回折強度データを得ることができた。この結果から結晶性を落とすこと無く、穏やかに溶液のpHを可変することができるものと期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究ではpH可変による蛋白質構造の変化を見出すことを目指している。結晶化条件のスクリーニングからpH4からpH9の範囲で単結晶が得られる事が確認できたことから、本研究を推進できるものと思われる。また、pH5の条件でアミノ酸側鎖や水分子を確認できる十分な分解能の回折強度データを得ることできた。また、緩衝領域の異なる3種類の緩衝液を混合して用いたところ結晶に影響の少ない混合緩衝液を特定する事ができた。これらの事から結晶性を損なうことなく穏やかに結晶のpHを変化できるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究ではPSII結晶のpHを可変させた結晶構造解析を目的としている。今回、緩衝液を変えることなくpHを変化させるためマロン酸、イミダゾール、ホウ酸の混合緩衝液を実験に用いたところ、中性付近で1.9Å分解能の回折強度データが得られたことから、この混合緩衝液を用いて様々なpH状態について検討を進める予定である。 pH可変によるS2反応中間状態をトラップする手法については励起光が十分に透過する微小結晶での実験を行う予定である。微小結晶にQスイッチのNd:YAGパルスレーザーを照射し、直後に瞬間的に凍結する手法を検討する。凍結した結晶の蛍光X線吸収スペクトル分析から、活性中心のMnクラスターの価数変化が確認されたことから、結晶を十分に励起できるものと期待される。
|
Research Products
(13 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Crystal structure of the oxygen evolving photosystem II in the intermediate state revealed by femtosecond X-ray free electron lasers2016
Author(s)
M. Suga, F. Akita, M. Kubo, Y. Nakajima, K. Yamashita, T. Nakane, M. Nakabayashi, Y. Umena, M. Suzuki, E. Nango, R. Tanaka, S. Inoue, T. Masuda, K. Tono, T. Kimura, Y. Joti, M. Yamamoto, O. Nureki, M. Yabashi, T. Ishikawa, S.o Iwata, M. Sugawara, J.-R Shen
Organizer
The 17th International Congress on Photosynthesis Research
Place of Presentation
Maastricht, Netherland
Year and Date
2016-08-07 – 2016-08-12
Int'l Joint Research
-
-
-
-
-