2015 Fiscal Year Annual Research Report
一次繊毛関連因子により構築される細胞周期監視システムの新展開
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15H05596
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
千葉 秀平 大阪大学, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (60572493)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 一次繊毛 / 基底小体 / 中心体構造変換 / 細胞周期 / チェックポイント / 多繊毛細胞 / Appendage / ユビキチン化 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管重合中心である中心体は分裂期では紡錘体の極、休止期では一次繊毛の土台である基底小体として細胞周期の各段階に応じて柔軟に機能を変化させる。細胞周期と同調した中心体の機能変化が、いかなる分子システムによって担われているのかについては未だに詳細がわかっていない。申請者は、一次繊毛形成の際に中心体から基底小体への変換に関わる因子が、増殖相進行中には意外なことに中心体外で細胞周期の進行を監視する機能を保持している可能性を見出した。本研究は、この”非繊毛機能”と”中心体構造変換”の二役を一手に担う蛋白質群の発見をもとに、細胞周期と密接な同調性をもつ中心体の機能ならびに構造変換の分子基盤を世界に先駆けて明示することが目的である。 本年度は当初の研究計画通り、Appendageタンパク質の発現抑制によるDNA損傷修復への影響の解析、細胞周期チェックポイントへの影響の解析に着手した。さらに特異的抗体を用いた各種Appendageタンパク質のDNAダメージ依存的な核内局在について網羅的解析を行い、Appendageタンパク質の一部が協調してDNA損傷またはDNA複製ストレス依存的に核内に集積することを見出した。また、対象タンパク質の"真の中心体制御機能"を解析する上で優れた系として研究計画案で提案したAir-liquid interface(ALI)によるマウス気管上皮の初代培養細胞システム (mTEC)の確立、レンチウィルス発現システムによる過剰発現系とshRNAによる発現抑制系の整備が着々と進んでおり、すでに次年度の研究計画案の遂行に向けて周到に準備している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. Appendage複合体の核内集積ならびにその調節機構の解析 内在性タンパク質を特異的に認識する抗体を用いた免疫染色法の結果、複数のAppendageタンパク質がDNA損傷またはDNA複製ストレス依存的に核内に集積することを見出した。さらに、Appendageタンパク質の複合体解析ならびにsiRNAを用いた発現抑制実験によりAppendageタンパク質の一部が複合体として核内に集積することが判明した。 2. マウス気管多繊毛細胞培養システムを用いた新規中心体構造変換関連因子の探索 一般的な培養細胞系を用いた中心体動態制御関連因子の発現抑制実験は、細胞周期進行の異常、紡錘体構築の欠陥、増殖制御異常による細胞死の誘導、物質輸送の異常など、結果的に細胞活動への広範な影響を伴うため、解析対象とする因子の”真の中心体制御機能”を解き明かすのは困難である。Air-liquid interface(ALI)によるマウス気管上皮の初代培養細胞システム (mTEC)は繊毛構築に伴う中心体構造変換が核膜崩壊を伴わずに起こるため、標的タンパク質の中心体制御機能を解析する上で優れた系である。本年度は、中心体への局在を呈する細胞周期関連因子や各種DNAダメージ修復関連酵素の中心体構造変換への関与を明らかにするための前段階として、Centrin2-GFPを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを由来としたmTec培養系の構築とレンチウィルス発現システムによる過剰発現系、ならびにshRNAによる発現抑制系を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. Appendage複合体の核内集積とその動態変化の解析: Appendageタンパク質について、核内集積に至る動態変化を経時的に観察する。すでに大部分の既知Appendage構成タンパク質について、緑色蛍光タンパク質 (GFP)を融合したコンストラクトの構築が完了しており、引き続き、各種DNAダメージ負荷によるAppendageタンパク質の動態変化を生細胞ライブセルイメージングにより詳細に解析していく。 2. Appendage複合体の核内集積調節機構の解析: 本研究ではAppendageタンパク質の核内集積を調節する機構を解明するため、当初の研究計画通り、既知のDNAダメージ修復関連タンパク質によるAppendageタンパク質のリン酸化制御に加え、ユビキチン化、SUMO化、アセチル化といった各種翻訳後修飾による制御も想定しながら解析を遂行していく。興味深いことに、現時点でAppendageタンパク質のひとつがユビキチンプロテアソーム依存的分解非関連性のポリユビキチン化修飾を受けることを見出しており、これを足がかりとして、Appendageタンパク質の”非中心体機能”と”中心体構造変換機能”を調節する機構の実態解明へと繋がることが期待される。 3. マウス気管多繊毛細胞培養システムを用いた新規中心体構造変換関連因子の探索 前年度までに構築したCentrin2-GFPを恒常的に発現するトランスジェニックマウスを由来としたmTec培養系、レンチウィルス発現システムによる過剰発現系とshRNAによる発現抑制系を用いて、培養細胞系では解析が困難と想定される中心体局在を呈する細胞周期関連因子、DNAダメージ関連酵素の中心体構造変換機能を明らかにしていく。
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Research Products
(3 results)