2015 Fiscal Year Annual Research Report
微小管―小胞体相互作用を基盤とするオルガネラ集積領域の役割と構築メカニズムの解明
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15H05598
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
濱田 隆宏 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20452534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オルガネラ集積領域 / 微小管 / 小胞体 / 植物 / メタボローム |
Outline of Annual Research Achievements |
植物の微小管は細胞内で染色体の分配、細胞伸張方向の制御、分裂方向の制御、細胞質分裂など多様な役割を担っている。一方、植物のオルガネラ輸送は主にアクチン繊維―ミオシンによって担われており、植物における微小管のオルガネラ輸送への寄与はあまり明確ではない。これまでのイメージング解析により、微小管に小胞体が係留され、そこにゴルジ体・ミトコンドリア・ペルオキシソームなどのオルガネラ、mRNAやsmall RNAを含むRNA顆粒などが集積することを明らかにした。さらに微小管と小胞体の相互作用を解析することにより、植物のキネシンがゆっくりとしたオルガネラ移動に働くことを示した。また微小管付随タンパク質群(MAPs)プロテオームにより、微小管には多くの細胞質の一次代謝酵素が結合していることが示唆された。 本研究では、この微小管周辺で様々なオルガネラやRNA顆粒が係留される場所を「オルガネラ集積領域」と呼ぶ。微小管には多くの代謝酵素が結合し、またオルガネラ間相互作用が活発であると予想されるため、オルガネラ集積領域は様々な代謝経路の拠点である可能性が高い。そこで本研究では代謝物に注目し、微小管とオルガネラ集積領域の役割を明確にすることを目的とする。 今年度は、微小管の脱重合によりオルガネラ集積領域を微小管と共に消失させ、どのような代謝異常が生じるかをワイドターゲットメタボロームにより解析した。その結果、微小管の脱重合により、大半のアミノ酸の蓄積量に異常が生じることが明らかとなった。MAPsプロテオームではアミノ酸代謝とアミノ酸代謝の基盤となるペントースリン酸経路の酵素が同定されており、メタボロームの結果と一致する。また他のアミノ酸と独立した経路を持つヒスチジン代謝酵素はMAPsプロテオームでは同定されておらず、予想通りメタボローム解析ではヒスチジン蓄積量に異常が生じなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MAPsプロテオームにより微小管・オルガネラ集積領域がアミノ酸に関わることが予想されていたが、実際にワイドターゲットメタボローム解析により確認された。このことより未知であった微小管・オルガネラ集積領域の役割の一端が明らかにすることができた。現在、他の解析のための準備も進んでおり、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
微小管の脱重合によりアミノ酸の蓄積量の変化が生じた詳細なメカニズムを特定するため、さらなる代謝物の解析を行う。実験には培養細胞を用いているため、培地条件を変更することで代謝経路の変動を生じさせ、解析を行う。またMAPsプロテオームで同定した代謝酵素の局在解析を行い、実際に代謝酵素が微小管上に局在するのか、また代謝経路上で近くに位置する代謝酵素群が複合体を形成しているのかを明らかにする。またオルガネラ集積領域の構築機構を調べるため、微小管―小胞体相互作用因子の解析も行う。
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Research Products
(1 results)