2015 Fiscal Year Annual Research Report
送粉共生が駆動した花香多様化の分子基盤:迅速アッセイ系を用いた実験的解明
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15H05604
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 雄大 独立行政法人国立科学博物館, 植物研究部, 研究員 (40522529)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 花香分析 / 比較ゲノム解析 / トランスクリプトーム解析 / 遺伝子機能解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
カンアオイ属の花香の多様性を明らかにするため、同属32種52個体について、SPMEを用いたヘッドスペース法による花香分析を行った結果、カンアオイ属の主たる花香成分が、ジメチルジスルフィド、単鎖のエステル類、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペンであり、特に前3者の有無は種ごとに大きく異なり、また系統関係を必ずしも反映しないことを明らかにした。このことは、カンアオイ属の花香がその多様な送粉様式への適応であるとする仮説を間接的に裏付けるものである。 さらにカンアオイ属4種、コミカンソウ科4種、ユキノシタ科1種について花の網羅的トランスクリプトーム解析を行った。特にコミカンソウ科とユキノシタ科について解析を進め、テルペン合成酵素のカタログを得た。最も花香の進化生態学的役割の解明が進んでいるチャルメルソウ属については、花香成分の生合成に関与する遺伝子セットを全て網羅し、その進化過程を明らかにするため、モデルとなる近縁な2種(コチャルメルソウ、チャルメルソウ)間で比較ゲノム解析も行った。 これらの遺伝子解析結果からコミカンソウ科、ユキノシタ科のテルペン合成酵素遺伝子のカタログを作成し、これらの多くについて大腸菌を用いた組み換えタンパク質アッセイを行い、機能解明を試みた。その結果、新たにコミカンソウ科のβエレメン合成酵素、βオシメン合成酵素、ユキノシタ科のβカリオフィレン合成酵素を同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたトランスクリプトーム解析、不足していたカンアオイ属の花香成分の分析、コミカンソウ科とユキノシタ科に置ける新しい遺伝子機能の解明に成功したため、概ね計画は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度より支援研究員1名を雇用したため、協力して花香遺伝子の機能解明と進化解析に当たる。特に、当初の予想以上に多様であることが判明したカンアオイ属の花香成分の多様性がどのようにして生じているかに力点を置き、研究を進める予定である。具体的には、カンアオイ属の主要な花香成分であるジメチルジスルフィド、単鎖のエステル類、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペンの生合成がどのような遺伝子によって支配されているかを種間の花香成分プロファイルとトランスクリプトームデータとの比較によって解明する。
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Research Products
(7 results)