2016 Fiscal Year Annual Research Report
iQTL-seq; 品種間交雑後代における新規遺伝子単離技術の開発
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15H05611
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
高木 宏樹 石川県立大学, 生物資源環境学部, 助教 (80616467)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物育種 / バイオインフォマティクス / 植物遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、新規遺伝子単離技術「iQTL-seq;identification of the gene controlling quantitative trait」の確立を目的としている。 当該年度は、昨年度まにiQTL-seq法で同定されたイネ品種「Nortai」由来の圃場抵抗性遺伝子の機能解析に供試する形質転換体の自殖種子の増殖を行なった。 また、パイプライン化が終了したiQTL-seq法を用いて、新たにイネ品種「Hitomebore」由来の耐冷性遺伝子同定を行なった。北東北で栽培される耐冷性レベルの高い品種である「Hitomebore」と耐冷性レベルの低い品種である「Sasanishiki」の間で交雑F3世代を育成し、iQTL-seq法により候補遺伝子の同定に成功している。また、出穂期の「Hitomebore」および「Sasanishiki」 において、継時的に幼穂からRNAをサンプリングし、RNA-seqによる発現産物の網羅的な比較解析を実施している。さらに、候補遺伝子の機能確認のために「Hitomebore」 EMS突然変異系統群のTILLING解析により、候補遺伝子に変異が入っている系統の探索およびCRISPR-Cas9による候補遺伝子のノックアウト形質転換体の作製を行っている。 また、iQTL-seq法を用いてイネ品種「Sesia」における太稈性を支配する遺伝子を同定するため、「Sesia」と稈が細い品種である「Hitomebore」間で育成された245系統のRILsにおいて第3節間と第4節間の断面係数を調査した。現在までにバルクシーケンス解析により「Sesia」由来の太稈性を支配する原因遺伝子座を複数同定することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、iQTL-seq法を適用して、イネ品種「Nortai」由来のイネいもち病に対する圃場抵抗性遺伝子および「Hitomebore」由来の耐冷性遺伝子の候補を同定した。 「Nortai」由来のイネいもち病に対する圃場抵抗性遺伝子は、候補となる遺伝子の機能確認用形質転換体がすでに作製されている。また、「Nortai」および「Hitomebore」をそれぞれ一回親および反復親として連続戻し交配により準同質遺伝子系統(NIL)を育成している。NILは、全ゲノムシーケンスによる一塩基多型箇所の解析に供試して、95%以上が「Hitomebore」遺伝背景であることが確認されている。また、圃場での形質調査の結果、育成されたNILは、圃場抵抗性レベルは、「Hitomebore」よりも高く、一方、栽培上重要な形質については、「Hitomebore」と有意な差が見られないことが確認されている。 また、イネ品種「Hitomebore」由来の耐冷性遺伝子は、候補遺伝子の機能解析のため、約12,000系統のHitomebore EMS突然変異体の中から候補遺伝子に変異が入っている系統の探索を開始している。現在までにナンセンス突然変異体を選抜しており、最終年度に低温室および耐冷性試験圃場において野生型と変異体型の表現型を調査する。また、候補遺伝子の機能解析のためにRNA-seqも実施しており、次年度における詳細な解析により、候補遺伝子の機能の推定を行う。さらに、候補遺伝子の発現部位を調査するため、候補遺伝子のプロモーター制御下でGUS遺伝子を発現させた形質転換体も育成しており、次年度における候補遺伝子発現部位の調査に供試できる体制が整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、これまで同定された候補遺伝子の機能解析を進める。 「Nortai」由来のイネいもち病に対する圃場抵抗性遺伝子に関しては、まず、昨年度までに作製した以下の3つの形質転換体を用いて候補遺伝子の機能を確認する。1:Nortai由来の候補遺伝子をネイティブプロモーター制御下で発現させた「Hitomebore」形質転換体。2:RNAiによる候補遺伝子の発現抑制をおこなった「Nortai」形質転換体。3:CRISPRE-CAS9による候補遺伝子のノックアウトをおこなった「Nortai」形質転換体。また、昨年度までに育成されたNILについては、イネいもち病接種後に継時的なRNA-seqを実施し、「Hitomebore」および「Nortai」の発現産物を網羅的に比較解析することで、耐病性メカニズムの推定を行う。 「Hitomebore」由来の耐冷性遺伝子に関しては、まず、候補遺伝子の確認のために、当該遺伝子にナンセンス変異が見つかったHitomebore EMS突然変異体およびCRISPR-Cas9による候補遺伝子のノックアウトをおこなった「Hitomebore」形質転換体の表現型を調査する。また、候補遺伝子のプロモーター制御下でGUS遺伝子を発現させた形質転換体は、幼穂形成期に継時的にサンプリングし、発現局在をパラフィン切片作製後のGUS染色により、詳細に調査する。 「Sesia」由来の太稈性遺伝子に関しては、昨年度までに複数の候補遺伝子領域が検出されたが、各遺伝子領域の機能を明らかにするため、それぞれの候補遺伝子領域を単独で有するNIL育成を進める。また、稈におけるRNA-seqを「Hitomebore」および「Sesia」間で実施する。
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