2016 Fiscal Year Annual Research Report
複合微生物系におけるプラスミドの「真の」宿主域の解明
Project/Area Number |
15H05618
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
新谷 政己 静岡大学, 工学部, 准教授 (20572647)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 宿主 / 嫌気性細菌 / 複合微生物系 / 接合伝達 / GFP |
Outline of Annual Research Achievements |
1.微好気・嫌気条件下で接合伝達可能なプラスミドの探索 GFPを発現する受容菌を利用して,環境試料より接合伝達性の薬剤耐性プラスミドの探索・取得を試みてきた.これまでに嫌気発酵槽内の汚泥や牛糞試料よりIncP-1群・PromA群に属すると推定されるプラスミドを得ることに成功し, 3つのプラスミドについて全塩基配列を決定した.特にPromAに属するプラスミドについては,新規性が高いことが示唆された. 2.微好気・嫌気条件下におけるプラスミドの接合伝達現象の検出・分離法の確立 当初計画していた嫌気条件下で蛍光を示すタンパク質(FbFP)の利用が本研究の目的に必ずしも適していないことが判明したため,再度GFPの利用を試みた.嫌気条件下の接合実験後,短時間酸素に曝すことでGFPの蛍光の検出を試みた結果,嫌気条件下で形成させた接合完了体のコロニーが,好気条件下に移して数時間で蛍光を示すことが判明した.この性質を利用して,モデルプラスミドpBP136::gfpについて,絶対好気性細菌のPseudomonas putidaをpBP136::gfp の供与菌とし,通性嫌気性細菌のPantoea属,Buttiauxella 属,Pseudomonas stutzeri株を受容菌として接合実験を行った.結果として,プラスミドは嫌気条件下でいずれの受容菌にも伝達することが示され,その伝達頻度は好気条件下よりも1/100-1/1000程度低いことが判明した. 上述した方法を利用して,pBP136::gfpの供与菌を,環境中の複合微生物集団と混合して,嫌気チャンバー内で接合実験を行った結果,接合完了体を得ることに成功した.プラスミドを有する細胞を検出するplasmid-FISH法については,科研費の国際共同研究強化の課題と連携して,その精度と確度を高める実験を開始した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始年度,当初予定していた蛍光タンパク質が,本研究の目的に適していないことが判明したために,既存のプラスミドについて,嫌気条件下で接合伝達するかどうかの検証ができていなかった.このため,2年目開始時には,当初計画よりやや遅れているとしたが,GFPを利用した実験が可能であることが示され,実際に嫌気条件下でのプラスミド伝播を検出し,その頻度を測定することに成功した.また嫌気条件下で,プラスミドが複合微生物系内のどの微生物に伝播するのか明らかにすることも可能になり,その宿主域を決定するための見通しが立ったと考えている.これらの手法は,GFPの発現に依存しているため,バイアスが大きいと考えられるが,プラスミドDNAを直接検出するplasmid-FISHについても確立に向けて,段階的に実験を行っており,当初の計画通り順調に進んでいると考えている.
|
Strategy for Future Research Activity |
1.嫌気条件下で接合伝達可能なプラスミドの探索 モデルプラスミドpBP136::gfpが宿主にカナマイシンやクロラムフェニコールを与えることを利用して,当該プラスミドが絶対嫌気性細菌(Desulfovibrio属,Geobacer属,Clostridium属細菌等を想定)に伝達可能かどうかを検証する.また,本研究で新たに得られたPromA群プラスミドに,gfp遺伝子や抗生物質耐性遺伝子を導入し,微好気・嫌気条件下でのプラスミドの伝播の可否について,通性嫌気性細菌や,上記絶対嫌気性細菌を受容菌とした接合実験を行って調べる. 2.嫌気条件下におけるプラスミドの接合伝達現象の検出・分離法の確立 嫌気条件下でプラスミドを受け取った微生物を,GFPの蛍光を指標に検出する方法については確立できたため,平成29年度は,これらの細胞をフローサイトメトリーにて分離し,どのような微生物がプラスミド(pBP136およびPromAプラスミド)を受け取ったか調べ,その宿主域を明らかにする.同時に,好気条件下における宿主域についても調べ,嫌気条件下の結果を比較し,プラスミドが実際の環境中ではどのような微生物に伝達しうるのか,その「真の」宿主域の解明を目指す.また, plasmid-FISHについては,モデルプラスミドのpBP136のコピー数が10以下と低いことを考慮し,まずは当該プラスミドの一部をクローニングした高コピープラスミドを準備し,大腸菌内でのプラスミドDNAの検出を試みているところである.本手法が確立し次第,同様にフローサイトメトリーに適用可能かどうか検証する.
|
Research Products
(14 results)