2017 Fiscal Year Annual Research Report
放棄竹林の拡大と気候変動の複合作用が森林流域の洪水・渇水流量に及ぼす影響の解明
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15H05632
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Research Institution | Ishikawa Prefectural University |
Principal Investigator |
藤原 洋一 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (10414038)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放棄竹林 / 積雪・融雪 / 積雪観測 / 渇水緩和機能 / 融雪遅延機能 / 気候変動 / 水資源 / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
1.研究目的:管理竹林のみの流域、放棄竹林のみの流域、針葉樹林のみの流域を対象として、流量観測、雨水の流出経路を調べるためのトレーサー分析を行い、竹林の持つ洪水・渇水緩和機能を健全な針葉樹林のそれらと比較する。そして、放棄竹林の拡大と気候変動の複合作用が森林流域の洪水・渇水流量に及ぼす影響を解明することを目的としている。 2.研究成果:昨年度の研究により、拡大竹林内における積雪量は落葉樹林内の積雪量より約14%少なくなる結果となった。今年度は、森林と積雪との関係について掘り下げるために、林内とオープンスペースにおける積雪・融雪を比較した研究論文を探し、これらの研究結果を整理することで、林内の積雪とオープンスペースの積雪のどちらの方が遅くまで残るかを明らかにすることを試みた。収集したデータ、観測データから、林内における消雪日と隣接するオープンエリアにおける消雪日を読み取った。そして、林内とオープンスケースの消雪日の違いを求めた。 次いで、消雪日の違いを目的変数、冬期平均気温、冬期降水量、冬期平均風速を説明変数として、決定木モデルを適用した。まず、冬期平均風速が2.0 m/sを境にして分岐しており、これよりも風速が強いエリアにおいては常緑樹林の方がオープンスペースよりも積雪が長く残ることになっていた。次に、風速が2.0 m/sより弱い場合、冬期平均気温が2.3℃よりも低ければ常緑樹林内の積雪の方が長く残り、2.3℃よりも高ければオープンスペースの積雪の方が長く残る結果となった。一方、落葉樹林の場合、冬期平均気温-2.5℃が最初の境界となっており、これより気温が低いエリアでは落葉樹林内の積雪が長く残る結果となった。さらに、冬期平均気温が0.15℃より低ければ落葉樹林内の積雪が少し長く残り、0.15℃より暖かければオープンスペースの雪が少し長く残ることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
積雪・融雪の観測も順調に行っており、継続したデータを取得することができている。また、自らの水文・気象観測だけでなく、既往の研究成果を整理解析(メタ解析)することによって、これまで解明されていなかった現象を解釈できるようになった。さらに、論文発表も順調に行っていることから、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までの研究によって、竹林拡大が土壌内部における雨水の流出経路に及ぼす影響、放棄竹林が積雪融雪に及ぼす影響、森林の有している融雪遅延機能などを明らかにすることができた。今年度は、こうした知見を水文モデルに組み込み、放棄竹林の拡大および気候変動が同時に生起した場合に、流域の洪水量や渇水量がどのように変化しうるのかを予測する。
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Research Products
(21 results)