2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05638
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
菊池 義智 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (30571864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 共生 / 昆虫 / 微生物 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は昆虫にみられる宿主-細菌間相互作用の分子機構の総合的理解を目指し、昆虫では例外的に共生細菌の培養と遺伝子組み換えが可能なホソヘリカメムシ-Burkholderia共生系を対象に研究を行っている。本研究の全体構想は以下のようになる:①培養時と共生時における共生細菌の遺伝子発現比較により共生時に特異的に発現する遺伝子を同定;②共生時に特異的に発現亢進する遺伝子の欠損株を作成し機能解析を行う;③得られた知見を統合し、内部共生の遺伝的基盤を網羅的に解明する。 本年度は、培養時と共生時における共生細菌の遺伝子発現比較により共生時に特異的に発現する遺伝子の同定について、トランスクリプトーム解析の結果を精査するとともに、培養時の細胞と共生時の細胞について形態・生理・ストレス耐性等を広範に比較し、カメムシへの共生による変化を総合的に評価した。その結果、共生時においてポリエステル合成酵素の亢進や膜透過性の増大、窒素・硫黄代謝の亢進、酸化ストレスへの抵抗性増加などが特徴的に見られることが明らかとなった。窒素化合物や硫黄代謝の活性化は、宿主の窒素・硫黄老廃物のリサイクルに関与している可能性が考えられる。この点を検証するために、これら代謝系の遺伝子の中から共生時に特に発現亢進する遺伝子を抽出し、遺伝子欠損株の作成およびカメムシへの感染実験を行なった。これら遺伝子変異株をカメムシに感染させたところ、野生株同様に共生器官に安定的に定着することが明らかとなった。これらの結果は、窒素老廃物や硫黄老廃物の代謝機能は少なくともカメムシ共生器官への感染・定着には必須ではないことを示している。今年度の研究において酸化ストレスへの耐性能などさらなる共生関連遺伝子候補も見つかっていることから、次年度以降はそれら遺伝子の機能について調査を進める。本研究による成果を国内外の学会で発表し、国際誌への投稿も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共生細菌のトランスクリプトームについてはさらなる精査が必要だが、本年度は共生関連遺伝子の同定に向けていくつかの候補遺伝子を発見し、遺伝子組み換え等により検証実験を行い、当初の計画通り十分な成果を得ることができた。学会発表や論文発表も積極的に進めており、概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
計画3年目は、本年度に精査したBurkholderia共生細菌のトランスクリプトーム解析および細胞学的解析結果に基づき、共生時特異的に発現亢進する遺伝子について遺伝子欠損株を作成し、カメムシへの感染実験を行う。候補としては酸化ストレス耐性遺伝子や、抗菌タンパク質耐性遺伝子など、宿主昆虫の免疫系と関連し、かつ共生器官への定着と増殖において重要と考えられる遺伝子群を優先的に解析する。感染・定着の状態についてはプレーティングおよび定量PCRにより確認し、また各遺伝子の欠損株についてGFP発現株を作成し、体内動態を顕微鏡により観察する。得られた成果を統合することで、共生細菌における昆虫体内への適応機構を総合的に解明する。
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Research Products
(9 results)