2015 Fiscal Year Annual Research Report
交感神経によるリンパ球動態制御の分子基盤と生理的意義の解明
Project/Area Number |
15H05656
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 一博 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (60611035)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 免疫学 / リンパ球 / 交感神経 / シグナル伝達 / 概日リズム |
Outline of Annual Research Achievements |
我々のこれまでの研究から、交感神経からのノルアドレナリンの入力が、リンパ球上に発現するβ2アドレナリン受容体を介して特定のケモカイン受容体の反応性を増強し、リンパ球のリンパ節からの脱出を抑制することによって、リンパ球の体内動態の制御に関与することが明らかになった。本研究は、β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークの分子メカニズムを明らかにすると共に、交感神経の活動性の概日リズムに伴うリンパ球動態の変化が適応免疫応答に及ぼす影響を解析することによって、交感神経によるリンパ球動態制御の生理的意義を解明することを目的とする。平成27年度は、当初の研究計画にしたがって以下の2点について研究を行った。 1) β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークの分子機序 我々はケモカイン受容体の細胞内領域に会合する新規分子を同定した。この新規分子がβ2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のシグナル伝達のクロストークに関与すると予想して解析を進めたが、この新規分子は受容体間クロストークには関与していないことがわかった。そこで、Gタンパク共役型受容体の主要なシグナル制御因子の一つに注目して、その受容体間クロストークにおける役割を明らかにすることとし、その遺伝子欠損マウスの作製を開始した。 2) 交感神経によるリンパ球動態制御の生理的意義 マウスの体内では交感神経の活動性が高まる夜間にリンパ球のリンパ節からの脱出頻度が低下するのに伴って、リンパ節におけるリンパ球数が増加することが確認された。また、リンパ節におけるリンパ球数が増加する時間帯に、液性免疫応答が強く誘導されることがわかった。さらに、リンパ球のリンパ節における出入りを遮断したところ、液性免疫応答の日内変動が消失したことから、リンパ球のリンパ節を介する再循環が適応免疫応答の日内変動に寄与していることが明らかになった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想に反して、我々が同定した新規分子は、β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークには関与しないことがわかった。しかし、交感神経によるリンパ球動態制御の生理的意義に関しては、適応免疫応答の日内変動の検出に成功し、それがリンパ球のリンパ節を介する再循環に依存することを明らかにすることができたため、研究はおおむね順調に進捗していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークの分子機序 当初の予想に反して、我々が同定した新規分子は、β2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークには関与しないことがわかった。このため研究計画の変更を余儀なくされたが、今後はGタンパク共役型受容体の主要なシグナル制御因子の一つに注目し、その遺伝子欠損マウスの解析を通じてβ2アドレナリン受容体とケモカイン受容体のクロストークの分子メカニズムの解明を進める。 2) 交感神経によるリンパ球動態制御の生理的意義 交感神経によるリンパ球動態制御の生理的意義に関しては、当初の研究計画にしたがって研究を進める。今後は、交感神経を除去したマウス、およびβ2アドレナリン受容体欠損マウスにおいてリンパ球動態、および液性免疫応答の日内変動を解析することによって、交感神経によるリンパ球動態の制御機構が適応免疫応答の日内変動にどの程度寄与しているかを明らかにする。また、明暗サイクルを偏移させる(ジェットラグ)、あるいは体内時計遺伝子を欠損させることによってマウスの概日リズムを攪乱した場合に、リンパ球の動態および適応免疫応答がどのように変化するかを解析することによって、生体が規則正しい概日リズムを刻むことの免疫応答における意義を明らかにする。
|