2016 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝的背景を揃えたコントロールiPS細胞を用いたALSの細胞種特異的な病態の解明
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15H05667
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 直輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70451599)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 筋萎縮性側索硬化症 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ALSではDNA/RNA結合蛋白質の細胞質内異常蓄積が見られRNA代謝異常が病態の鍵になると考えられている。FUSはTDP43やhnRNPA1とともにhnRNPファミリーに分類され、RNA代謝の主要な機能分子である。またVCPは蛋白分解経路の重要な分子であり異常蛋白質分解機構の破綻もALS病態に共通した機序であると考えられる。申請者らは蛋白分解系のプロテアソームの骨格筋特異的欠損マウスを作成し、プロテアソームが骨格筋のホメオスタシスの維持に必須であることを示してきた実績がある (J Cell Sci 2014)。RNA代謝異常や蛋白分解異常は神経筋疾患に共通した重要な治療標的になると考えられ、これらの経路に焦点を当てて解析を進めてきた。 これまで、家族性ALS家系の集積により13家系のFUS遺伝子変異を同定した。そのうち、1家系2例のFUS関連ALS(FUS-ALS)罹患者より本学倫理委員会で承認された手順に則り同意を得て、皮膚生検を行った。これより初代培養線維芽細胞を樹立し、連携研究者の施設にてiPS細胞樹立を行った。運動ニューロン分化後にRNAsequenceなどの解析を行ない、2016年にStemCell Reports誌に報告した。さらにゲノム編集技術を用いたアイソジェニックラインの作出も行った。作出したiPS細胞を用いて、運動ニューロンの特徴的な長い軸索突起を培養環境中で再現することを目的として新規マイクロ流体デバイスでの条件検討も行った。RNAseq解析により、細胞体および軸索に発現している遺伝子プロファイルを同定した。さらにFUS変異病態において変化の見られる遺伝子に着目し、機能解析に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は樹立した細胞を用いて、運動ニューロンの特徴的な長い軸索突起を培養環境中で再現することを目的として新規マイクロ流体デバイスの条件検討を行った。RNAseq解析により、細胞体および軸索に発現している遺伝子プロファイルを同定した。さらにFUS変異病態において変化の見られる遺伝子に着目し、機能解析に進んでいる。機能解析での評価項目について、再現性を見るために、酸化的ストレス負荷などをかけて評価における最適条件を調整している。またライブセルイメージングを用いて、FUSが結合するRNAの動きについても評価を行っている。hnRNPA1に関してはゲノム編集がやや遅れているが、樹立したiPS細胞に関しては運動ニューロンへの分化を行い、網羅的解析の準備が整いつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降はRNAseqによりFUS病態で変化のあった治療標的候補分子に対して遺伝子・薬剤導入の手法で軸索病態の改善が見出されるかを検証していく。RNA結合蛋白であるFUSとhnRNPA1を比較することで病態の共通点を見出す。上記検討中の表現型の解析方法の確立を経て、変異による軸索病態の把握と治療介入の検討を行っていく。運動ニューロン以外の細胞分化も行い細胞種特異的な現象について解析していく。 また、細胞で見られた表現型が生体内でどのような意味を持つかについても、ゼブラフィッシュやマウスモデルなど動物モデルを視野に入れて、解析の発展系について考えていきたい。
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Research Products
(11 results)