2015 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアにおけるROS増幅の誘導に基づく放射線増感法の確立
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15H05674
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
小野寺 康仁 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90435561)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射線 / 活性酸素 / ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
siRNAによる蛋白質発現阻害等の方法を用いて、乳癌細胞においてミトコンドリア分布に関与するタンパク質群(ミトコンドリア上のアダプターやモータータンパク質等)を幾つか同定した。また、それらのうち、タンパク質相互作用等がインテグリンシグナルの下流で制御され得るものを明らかにすることができた。さらに、当該タンパク質群をsiRNAで発現抑制した際には、ミトコンドリア分布が阻害されるとともに活性酸素産生の上昇や放射線への増感作用がみられ、着目しているArf6-AMAP1経路の阻害を行った際とほぼ同等の効果が得られることから、実際にそれらがArf6-AMAP1-インテグリン経路の下流で働きミトコンドリア分布の調節に関与していることが裏付けられた。興味深いことに、異なる形態および悪性形質を示す複数の乳癌細胞株を用いた解析から、当該のタンパク質群は特に浸潤性の高い細胞株でのみ明確な発現が見られることを確認している。乳癌以外のがん細胞におけるそれらの発現や、発現亢進のメカニズムについては現在解析中である。 上記に加えて、薬剤を用いた細胞内ミトコンドリア分布制御系の確立を完了し、薬剤添加によってミトコンドリアの集積が実際に引き起こされることを確認した。この実験系を用いて、ミトコンドリアの集積そのものと活性酸素種の細胞内濃度の上昇が直接関連すること、また、ミトコンドリア集積によってがん細胞の放射線への感受性が著しく高くなることを確認することができた。また、上述の浸潤性とインテグリンによるミトコンドリア制御機構が関連する結果を受けて、ミトコンドリア分布と浸潤活性との関連を調べた。その結果、薬剤によるミトコンドリア分布阻害そのものによって、乳癌細胞の浸潤能が著しく低下することを明らかにできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた通り、ミトコンドリア分布がインテグリンシグナル下流で制御される仕組みと、ミトコンドリア分布自体が活性酸素産生や放射線感受性と密接に関連することを明らかにすることができたため。また、異なる悪性度の乳癌細胞株を用いたミトコンドリア分布制御タンパク質群の発現比較解析によって、前項で述べたような当初想定していなかった興味深い結果を得ることができ、インテグリンがミトコンドリアを制御する「意義」についても明確にすることができたことから、「当初の計画以上に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で今回明らかにした分子メカニズムが、特に浸潤性の高い乳癌細胞において働き、活性酸素や放射線への耐性に寄与することが示唆されたことから、一連の関連分子を標的とした阻害剤等は、高い浸潤性を示す進行癌、あるいはそのような特徴を示す一部のサブタイプにおいて、特に有効であると予想される。次年度以降は、当初の予定通りに活性酸素の増幅によって細胞死が誘導されるメカニズムの解析を進めると同時に、上記の観点に基づき当該分子メカニズムが活性化する(タンパク質の発現が亢進する)機構についても解析を開始する。
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Research Products
(3 results)