2016 Fiscal Year Annual Research Report
口唇口蓋裂及び後鼻孔閉鎖症の発症機序にレチノイン酸シグナルが果たす役割の解明
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15H05687
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
黒坂 寛 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (20509369)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 顎顔面形成不全 / 口唇口蓋裂 / 後鼻口閉鎖 / レチノイン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
顎顔面の発生には様々な顔面突起の適切な成長及び癒合が必要不可欠である。異常な顔面突起の成長や癒合は顎顔面形成異常の原因となり、その中でも口唇口蓋裂や後鼻孔閉鎖症は最も高頻度で発生する疾患である。今回我々が着目したレチノイン酸(以下RA)シグナルは上記疾患との関連が示唆されてはいるものの、双方の疾患発症のメカニズムを包括的に理解するには至っていない。本年度は胎生時期特異的にRdh10をノックアウト出来るマウスの(Ert2Cre;Rdh10fxマウス)上顎複合体を摘出し、RNAseqを用いて網羅的な遺伝子発現解析を行った。それぞれ3体ずつのサンプルを調整し、それらの中から更に全体の遺伝子表現パターンが近似したものをデータ解析に用いる事で重要な遺伝子の絞込みや正確な発現比較解析が可能となった。その中でも特に繊維芽細胞成長促進因子(Fgf)シグナル伝達経路においてノックアウトマウスで顕著な上昇が認められる事を見出した。更に同シグナルの変化がnasal epitheliumにおける細胞増殖や細胞死に変化を起こす事によりノックアウトマウスにおいて後鼻孔閉鎖症が発症する事を見出した。この様な結果は今後の矯正歯科臨床のみならず顎顔面形成不全全般の病態解明をする上で非常に重要な知見となる。また、この結果は多くの学会発表および国際誌への論文投稿を行い、受理された(Rdh10 loss-of-function and perturbed retinoid signaling underlies the etiology of choanal atresia. Kurosaka H, Wang Q, Sandell L, Yamashiro T, Trainor PA. Hum Mol Genet. 2017 Apr 1;26(7):1268-1279.)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書に記載された内容は一部を除いてほぼ達成されている。論文投稿、受理もすでに終えており、今後は本研究の更なる発展を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はレチノイン酸シグナルと他の環境因子との相互作用に焦点を当てて研究を推進する。レチノイン酸シグナルは骨形成において重要な役割を果たすことは知られている。また、我々はレチノイン酸シグナルが活性化された細胞をin vivoで可視化出来るRareLacZレポーターマウスを用い、野生型マウスの上顎骨形成予定領域に強いレチノン酸シグナルの活性がある事、その近傍組織においてレチノイン酸代謝関連遺伝子であるRdh10遺伝子の発現が強く認められる事を既に見出している。本年度の研究では口唇口蓋裂の遺伝的要因であるRdh10の変異と環境的要因であるアルコールの相互作用による顎顔面形成や骨形成における役割を解明することを目的とする。異常な顔面骨の形成は口唇口蓋裂のみならず様々な顎顔面形成不全との関連が報告されている。顔面骨の形成の詳細なメカニズムを解明する事は多くの疾患の診断や治療法に繋がる可能性がある。具体的にはRdh10遺伝子変異をもつマウスにアルコールを投与した際に投与しない郡と比較して表現型にどのような差が現れるかを詳細に比較する。この事によりRdh10の変異による遺伝的要因と妊娠中のアルコール摂取という環境的要因の相互作用を明らかにする予定である。
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Research Products
(7 results)