2021 Fiscal Year Annual Research Report
多様な個人を前提とする政策評価型国民移転勘定の創成による少子高齢化対策の評価
Project/Area Number |
15H05692
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
市村 英彦 東京大学, 大学院経済学研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2015 – 2021
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Keywords | 少子高齢化 / 政策評価 / ノンパラメトリックス / セミパラメトリックス / 国民移転勘定 / 構造推定 / regression discontinuity analysis |
Outline of Annual Research Achievements |
日本および諸外国で利用可能な各種統計データの整備と分析を進め、少子高齢化政策を分析するための枠組み作りや、少子高齢化の諸現象を分析する世界標準に沿ったパネルデータの構築を目指し、より精度の高い分析手法の構築を進めた。1984年~2019年までの全国消費実態調査を用いて、同一のプログラムでNTAの作成ができるようにNTA分析手法の修正および改善を行った。NTAから得られた年齢別消費や労働所得のプロファイルはモデルに依存していないのでロバストな結果である。一方多くのマクロ分析で利用されるカリブレーション分析を行う際には、全体的な消費や所得変数のレベルはマッチさせるモーメントとして使われているが、年齢別プロファイルはモデルのパラメターをカリブレートすることで得られている。NTAから得られた消費プロファイルを用いてモデルから得られる消費プロファイルに制約を入れることで、重複世代型のライフサイクルモデルにおける消費レベルなどがどの程度SNA統計と解離することを抑えるかを分析した。カリブレーションモデルでは各人の性別、健康状態、教育レベル、就業状態、婚姻状態別の分析が可能で、このようなアプローチによりNTAと(従ってSNA統計と)できる限り整合的なかたちで且つ多様性を許したかたちで政策分析が可能な枠組みが作られる。 従来からカリブレーションモデルをはじめとする構造モデルは誤差項にパラメトリックな分布を仮定することで実証分析が進められている。次第にそのような仮定を置かず、効用関数などのみパラメトリックに仮定するセミパラメトリックな分析が開発されつつあるが、そのような推定方法の漸近分布は未知であった。そこで、そのようなモデルに対してのセミパラメトリックな推定手法を含むセミパラメトリックGMM手法に対して漸近分布を求める手法を開発した。またセミパラメトリックGMM手法が持つバイアスのオーダーを減らす一般的手法を開発した。 政策調査の研究においては、構造モデルの推定や家計行動の政策評価に用いるために実施する調査について幅広く行うことができた。「くらしと健康の調査(JSTAR : Japanese Study of Aging and Retirement)」のデータ活用により、将来の社会保障費への影響を分析するなど、高齢者におけるフレイルの発生要因の検討、社会経済的要因との関連(特に所得、資産、教育歴との関連)について研究を深めることができた。さらに、同データを用いて日本における60歳から74歳までの男性が就業形態をどのように変化させ、引退へと移行していくかについて分析を進めた。米国のデータを用いて日本と同様の分析を行い、日本と米国における特徴や傾向等を比較分析した。
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Research Products
(41 results)