2015 Fiscal Year Annual Research Report
| Project/Area Number |
15H05696
|
|---|
| Research Institution | The University of Tokyo |
|---|
Principal Investigator |
山内 薫 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授 (40182597)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2015 – 2019
|
| Keywords | 超高速化学 / 反応動力学 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
1. 既設のレーザーシステムを用いて発振器のCEP制御を行い、中空ファイバーパルス圧縮装置通過後の数サイクルレーザーパルスにおいてもCEPを制御できることを確認した。アト秒ビームラインの光学系を実験室内の振動から分離するとともに、高精度光学遅延発生器(分解能13 as)を導入し、ポンプ・プローブ計測システムを構築した。
2. 新規に導入予定の繰返し0.1 MHzの先端光源に対応するために既存のCMI装置の改造を行い、コインシデンス計測に加えて、飛行時間質量スペクトルの電流値を高速に記録することを可能とした。既存の数サイクルパルス光源を用いて、サブフェムト秒の時間分解能で時間分解CMI計測をCD_3OH、CH_3OD、CH_3CCH、CH_3NH_2、CH_3CNについて行った。CD_3OH、CH_3ODの測定結果から、CH_3OHの1価カチオンのCO伸縮振動の位相に同期してH_3^+が放出することが初めて見出された。CH_3CCHの測定結果では、プロトンの分子軸に対する放出角が遅延時間に依存して変化することを突き止めた。円偏光数サイクルパルスを希ガス原子に照射して光電子分光を行うことによって、CMI計測装置内における絶対CEPの同定が初めて可能となり、原子や分子の電子励起初期過程や分子の幾何学的構造の変化の絶対CEP依存性を評価できることを示した。
3. 角度分解飛行時間型LAED観測装置を完成させ、Xe原子を試料に使った電子の弾性散乱実験の結果、開発した角度分解飛行時間型LAED観測装置の検出効率が従来の装置の約50倍に達することが確認された。He原子を試料として非弾性電子散乱実験を実施した結果、開発した装置のエネルギー分解能が70 meVであることが判明した。強レーザー場中にある原子や分子の電子分布の時空間変化をモデル関数で記述した上で、LAED小角散乱信号を計算し、実測の信号と比較検討した。その結果、LAED小角散乱信号には、レーザー場による標的原子・分子の分極効果に加えて、入射電子による標的原子・分子の分極効果が現れることが示された。
4. CI係数分解近似をMCTDHFの枠組みで定式化し、1次元のモデル系による数値的な検証し、多粒子分子(電子+原子核)波動関数の高速な動力学計算への指針を示した。また、3次元現実系を扱う場合に数値計算の律速となる分子積分の評価を、ポアッソン方程式を解くことによって高速化できることを示した。さらに、第一原理MD計算を高速に行うために我々が開発したGO法をさらに拡張した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. 既存のレーザーシステムを用いて高次高調波発生装置の整備を行った。実験室内の振動の影響を分離する必要があったため、新たにアト秒ポンプープローブ計測システムを構築し、2年次以降に行うポンプープローブ計測における時間分解能の向上を可能とした。
2. 既存数サイクルレーザー光源を用いて、炭化水素分子の時間分解イオンCMI測定を行った。そして、3体解離過程の解析によって分子の幾何学的構造の時間変化を追跡することに成功した。このことは、時間分解能を向上すれば、研究課題を実現することが可能であることを示している。
3. 絶対CEPの同定が可能となったことは、原子・分子の電子励起初期過程や分子の幾何学的構造の変化の絶対CEP依存性を評価する上で大きな進展である。
4. 開発したLAED観測装置の検出効率が従来装置の約50倍であったという結果は、装置設計時の見積りと合致しており、本研究課題が順調に進展していることを示している。
5. 開発したLAED観測装置のエネルギー分解能が70 meVに達したという成果は、LAED信号の時空間干渉パターンが高いエネルギー分解能で得られることを示しており、本研究課題の目標である「LAED信号の時空間干渉パターンの解析による時間依存分子内電荷密度関数の再構築」を実現する上での大きな進展である。
6. 本研究によって、LAED小角散乱信号にはレーザー場による標的原子・分子の分極効果に加えて、入射電子による標的原子・分子の分極効果も顕著に現れることが示唆された。この成果は、LAED理論の新展開を促すと予測され、今後、当初の計画以上の成果が期待される。
|
| Strategy for Future Research Activity |
1. 2年次に導入する先端レーザーシステムの導入準備を進めるとともに、レーザー出力の評価装置を準備する。また、アト秒パルス発生装置とLEAD装置にレーザー光を導入するための光路系を光学部品によって構築する。
2. 既存レーザー光源を用いたアト秒パルス時間分解光電子測定を行い、希ガス原子にアト秒パルスを照射してアト秒パルス時間幅の最適化を行う。光電子-光イオンCMI装置を製作し、その性能評価を行う。時間分解CMI計測では、CH_3CN、CH_3NH_2分子の3体解離過程におけるプロトン放出の時間変化を観測し、レーザー場中分子の幾何構造の変化を解明する。数サイクルパルスを炭化水素分子に照射し、電子放出過程、電子の再衝突後の分子解離過程におけるレーザー場の搬送波位相に対する依存性を解明する。
3. パルス幅10 fsを切る数サイクルレーザーパルスによるレーザーアシステッド弾性電子散乱過程の観測を試みる。散乱電子信号のエネルギー・角度分布に数サイクルレーザーパルスの時間波形に依存した干渉パターンが現れることを実証し、レーザーパルスの時間コヒーレンスが散乱電子にどのように転写されるかを解明する。
4. H_2分子に対するEX-MCTDHF計算を実行する。分子積分の評価は球面座標系におけるポアッソン方程式を解くことによって高速化するとともに、計算された波動関数から観測量を引き出すための解析手法も同時に開発する。また、電子間相関と共に、時間に依存した電子一核相関を解析する。さらに、拡張されたGO法を用いて、光との相互作用の効果を取り入れることによって時間変化する多次元PESを構築する。トラジェクトリ計算により得られた双極子モーメントの時間変化から原子核波束運動形態に関する分光学的な情報を得る。
|
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Journal Article] Stabilization of a high-order harmonic generation seeded extreme ultraviolet free electron laser by time-synchronization control with electro-optic sampling2015
Author(s)
H. Tomizawa, T. Sato, K. Ogawa, K. Togawa, T. Tanaka, T. Hara, M. Yabashi, H. Tanaka, T. Ishikawa, T. Togashi, S. Matsubara, Y. Okayasu, T. Watanabe, E. J. Takahashi, K. Midorikawa, M. Aoyama, K. Yamakawa, S. Owada, A. Iwasaki, K. Yamanouchi
-
Journal Title
High Power Laser Science and Engineering
Volume: 3
Pages: 314-1-10
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Multiphoton ionization of He, Ne, Ar, and Xe using full-coherent free electronlaser seeded by high-order harmonics of near-infrared femtosecond laser pulses2015
Author(s)
A. Iwasaki, S. Owada, S. Ogami, T. Togashi, E. J. Takahashi, K. Midorikawa, M. Aoyama, K. Yamakawa, S. Matsubara, T. Watanabe, M. Nagasono, M. Yabashi, T. Ishikawa, K. Yamanouchi
Organizer
The 2015 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies
Place of Presentation
Honolulu (USA)
Year and Date
2015-12-15 – 2015-12-20
Int'l Joint Research
-
-
-
-
[Presentation] Ultrafast population inversion in N_2^+2015
Author(s)
E. Lötstedt, H. Xu, A. Iwasaki, K. Yamanouchi
Organizer
The 14th International Symposium on Ultrafast Intense Laser Science
Place of Presentation
Kauai (USA)
Year and Date
2015-12-09 – 2015-12-13
Int'l Joint Research / Invited
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
