2019 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05696
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Principal Investigator |
山内 薫 東京大学, 大学院理学系研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2015 – 2019
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Keywords | 超高速化学 / 反応動力学 / 強光子場科学 / 量子動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
高輝度超短パルスレーザー光源を用いたポンプ・プローブイオン計測、レーザーアシステッド電子散乱計測などの手法を開発するとともに、発展型時間依存多配置ハートリーフォック法などの理論手法によって、強レーザー場の中で進行する原子および分子のサブフェムト秒超高速ダイナミクスを解明した。 1. 新規100 kHz繰り返し先端レーザーシステムの導入と、新規、既存レーザーシステムのアト秒高次高調波ビームラインの整備 Wolterミラーを用いた高次高調波の結像光学系の開発によって、1ショット照射で200nm以下の結像分解能を得た。この結像光学系がアト秒領域の時間分解能での微細構造の変化を追跡することが可能であることを示した。また、集光した高次高調波によるアクリル樹脂薄膜金属ナノ粒子レジスト薄膜の微細加工に成功した。 2. フェムト秒およびサブフェムト秒レーザーパルスを用いた分子のイオン・光電子の相関画像計測 有機分子のイオン化に伴う分子内水素原子マイグレーション過程がサブフェムト秒領域の電子励起過程に影響を与えることなど、サブフェムト秒領域の分子ダイナミクスを明らかにした。メタノール分子の空間非対称な解離過程では、絶対CEPを同定すれば、サブフェムト秒領域で進行する原子・分子の初期電子励起初期過程や分子の幾何学的構造変化過程を明らかにできることが示された。 近赤外数サイクルパルス出力を用いたポンプ・プローブ計測によって、窒素分子イオン(N_2^+)から放出されたB-X遷移波長391nmのレーザー発振の強度が、遅延時間に対して2-3 fsの周期で振動し、A-X状態間の量子ビートに相当することを明らかにした。この結果から、B-X状態間の反転分布がA-X遷移によって促進されていることが実証された。偏光方向変調パルスのパラメータを変えながら、振動状態の異なる391nmと428nmのB-X遷移のレーザー発振強度を比較した結果、391nmのレーザー発振強度のみにA-X遷移の影響が表れており、この結果は、2015年に本研究の成果として発表した「B-X-A状態間のコヒーレント結合モデル」を支持するものである。 極端紫外領域高次高調波と数サイクルパルスを用いたポンプ・プローブ計測によって、電子高励起状態a ^4Π_g状態に生成したO_2^+が約40 fsの周期で振動する様子と、O_2^+が数十フェムト秒の間に解離する過程を実時間観測した 3. レーザーアシステッド電子散乱(LAES)と電子回折(LAED) 「THz波によるレーザーアシステッド電子散乱過程」を用いた分子イメージング法開発のため、レーザーアシステッド電子散乱観測装置の散乱点に単一サイクルTHz波を集光照射するとともに、散乱点におけるTHz波のパルス波形を電気光学サンプリング法によって計測できる光学系を設計・製作した。 電子衝撃イオン化観測装置を用いて、入射エネルギー1 keVの電子線とピコ秒レーザー(波長1030 nm、パルス幅1.2 ps)をAr原子に同時照射し、散乱電子と放出電子をコインスデンス計測することによって、1光子分エネルギー増加したレーザーアシステッド電子衝撃イオン化信号を初めて観測した。数値シミュレーションの結果、得られた信号強度は、光電場によるArの3p軌道の歪みを考慮しなければ説明できないほど強いことが明らかとなった。 4. BO近似を超えた量子動力学理論 強レーザー場におけるH_2^+分子の振動励起と解離過程の実時間発展をEx-MCTDHF法によって計算し、厳密解法との比較を行った。軌道関数を増加させることによって厳密解法に漸近することを示した。さらに、Ex-MCTDHF法によってCH_3OHの電子プロトン波動関数の実時間計算を行うための計算コードを開発した。またMCTDHFで計算されたHe原子の電子励起状態の波動関数の数値検証を行った。 光電場との相互作用が無い場合において、第一原理分子動力学計算による古典トラジェクトリーが走る座標空間内の位置において、断熱ポテンシャルをDFTおよびCISDレベルの電子状態計算によって逐次求め、CH_3OH分子に対して効率的な断熱ポテンシャル面の構築を試みた。この方法を中性状態および一価イオンの状態を表現する2面Hénon-Heilesポテンシャルのモデルに適用した。その結果、電場振幅の2次までを取り込んだ外部電場との相互作用を仮定した場合、2つのHénon-Heilesポテンシャル面が分子振動経路に沿って効率的に求められることを確認した。 弱く結合したHe…H_2^+の強光子場における動力学計算を、2次元3電子状態モデルを用いて解析し、He原子の存在によりH_2^+
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Research Products
(82 results)