2016 Fiscal Year Annual Research Report
新材料・新界面統合設計戦略に基づく革新的エネルギー貯蔵システムの構築
Project/Area Number |
15H05701
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 淳夫 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授 (30359690)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大久保 將史 東京大学, 大学院工学系研究科, 准教授 (20453673)
山田 裕貴 東京大学, 大学院工学系研究科, 助教 (30598488)
館山 佳尚 国立研究法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点 界面計算科学, グループリーダー (70354149)
原田 慈久 東京大学, 物性研究所, 准教授 (70333317)
朝倉 大輔 国立研究法人産業技術総合研究所, エネルギー技術研究部門, 研究員 (80435619)
|
Project Period (FY) |
2015 – 2019
|
Keywords | キャパシタ / 層状化合物 / 水 / 誘電率 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の最大の成果は、特定の層状化合物の層間にイオンと水分子が閉じ込められた場合、水分子が電場を過剰遮蔽、すなわち負の誘電率を持ち、大きな静電容量を持つキャパシタ電極を実現できることを発見したことである。理論計算から、層状化合物に閉じ込められた水分子の双極子分極が数Åオーダーの変調を持つ外部電場と共鳴して増幅されることが分かり、また、実験と理論の両面から、ルイス酸性の強いカチオンがこの共鳴効果を発現しやすいことが示された。この閉じ込められた水分子の負の誘電率、および、それに伴う静電容量の増大は、キャパシタに関する従来概念、すなわち、水和圏を連続体として扱うSternモデルを大幅に改良する必要があることを提示する学術的に重要な成果である。また、キャパシタの高性能化という観点からも、ナノ化という非実用的な手法に依存しない高エネルギー密度化の戦略を、閉じ込められた水分子の負の誘電率という具体的な内容で提示しており、重要な成果である。本成果は、近日中に学術誌へ投稿する予定であるが、昨年度ハイドレートメルトが特異的な高度電解液機能を誘発すること発見したブレークスルーに続き、孤立水分子の物性が電極機能に対しても有力な設計軸を与える場合があることを初めて明示しており、新たな水科学、水工学領域の開拓に繋がると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
層状化合物の層間に閉じ込められた水分子が負の誘電率を持ち、キャパシタを高エネルギー密度化することを明らかにした。本成果に基づく新規キャパシタの設計により、市販のキャパシタのエネルギー密度を大きく凌駕するキャパシタが実現する可能性がある。また、これまに注目されてこなかった層状化合物を利用した高容量キャパシタ電極の可能性が示されたことで、様々な2次元化合物を応用した新規キャパシタ電極活物質の開発が世界的に加速すると予想される。更に、ナノ空間に閉じ込められた水分子の特性、およびキャパシタ特性への影響を、分子レベルで再検討し、連続体モデルに基づく現行概念を一新する可能性がある。このように、昨年度のハイドレートメルトの高機能電解液機能発見に続き、超汎用物質である「水」に関する電気化学領域の基礎概念を大幅に塗り替える成果が続けて得られたことで、将来のエネルギー貯蔵変換技術、ひいてはIoT時代の電力システムに計り知れないインパクトを与える可能性がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
水の負の誘電率を利用した大容量キャパシタについて、現時点では、様々な層状化合物において発現する現象であるか、普遍性に関する知見が不足しており、今後、グラフェンやtransition metal dichalcogenidesなどの層状化合物において、実験および理論両面からの検証が必要である。また、理論的な検証についても、第一原理と分子動力学を組み合わせた高精度解析を積極的に導入することで、共鳴効果が発現する条件の精微化が可能である。更に、閉じ込められた水分子の化学的な状態ついて、例えば、テラヘルツ分光や軟X線分光などの高度解析技術を適用し、直接的な状態観察による現象の基礎理解が欠かせない。同時に、理論的な枠組みに関して、理論家との協業により水分子の誘電率が示す共鳴効果を静電容量、あるいはキャパシタのエネルギー密度まで結びつける基礎方程式を導出することが求められる。また、キャパシタの出力特性という観点から、閉じ込められた水分子と層間のイオン拡散の相関について、電気化学的アプローチによる解析が必要である。以上、実験・理論の協奏的アプローチにより、閉じ込められた水分子の基礎物性に関する知見を体系化するとともに、新たな蓄電デバイス概念の確立を目指す。昨年度のハイドレートメルトの高度電解液機能に続き、水分子の新たな機能性を続けて提示するに至り、これらのブレークスルー群を総合・体系化した新たな理工学術領域創製に繋げていく。
|
Research Products
(36 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] ナトリウム過剰層状酸化物における酸素レドックスの発現条件2016
Author(s)
大久保將史, Benoit Mortemard de Boisse, Guandong Liu, Jiangtao Ma, 西村真一, Sai-Cheong Chung, 木内久雄, 原田慈久, 吉川純, 山田淳夫
Organizer
第42回固体イオニクス討論会
Place of Presentation
名古屋国際会議場(愛知県名古屋市)
Year and Date
2016-12-06
-
[Presentation] Studying the extra capacity of A2M03 type cathodes using the Na2Ru03 model2016
Author(s)
Benoit Mortemard de Boisse, Guandong Liu, Jiangtao Ma, Shin-ichi Nishimura, Sai-Cheong Chung, Hisao Kiuchi, Yoshihisa Harada, Jun Kikkawa, Yoshio Kobayashi, Masashi Okubo, Atsuo Yamada
Organizer
第57回電池討論会
Place of Presentation
幕張メッセ 国際会議場(千葉県千葉市)
Year and Date
2016-12-01
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] Na2Ru03 : A Model to Study the Extra Capacity of a2m03 Type Cathodes2016
Author(s)
B. Mortemard de Boisse, Guandong Liu, Jiangtao Ma, Shin-ichi Nishimura, Sai-Cheong Chung, H. Kiuchi, Y. Harada, J. Kikkawa, K. Yoshio, Masashi Okubo, Atsuo Yamada
Organizer
IMLB 2016 - 18th International Meeting on Lithium Batteries
Place of Presentation
シカゴ(USA)
Year and Date
2016-06-20
Int'l Joint Research
-
-
-