2018 Fiscal Year Annual Research Report
新材料・新界面統合設計戦略に基づく革新的エネルギー貯蔵システムの構築
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15H05701
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 淳夫 東京大学, 大学院工学系研究科, 教授
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Project Period (FY) |
2015 – 2019
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Keywords | 水 / ハイドレートメルト / 孤立分子 / 孤立電子軌道 / 電気化学 / 軟X線分光 / 格子欠陥 / 電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
新規超3V高電圧水系電解液としてのハイドレートメルト中の水分子の状態について、01s軟X線発光分光とCPMD計算を併用することで溶液構造や電子状態の濃度に依存する変化を詳細に追跡した。孤立水分子の出現が確認されたのは概ね4M以上の一定の濃度以上の領域であり、ハイドレートメルト中では水素結合ネットワークは消失し水分子が孤立していることが実験的に裏付けられた。高濃度化に伴い、水分子間の水素結合は減少する一方、アニオンと水分子の水素結合は増加する。これらを反映する水素原子の射影状態密度の顕著な減少からも水分子の孤立化が示された。このように、新規材料系の超機能の起源について、第1原理計算と分光によるアプローチから検証し裏付けることができた。 これまでの独自の高濃度有機電解液設計指針を昇華する形で、新たにLiBF4/PC/FEC系高濃度電解液を開発し、これに合わせた電池システム設計を最適化することで5V級Li2CoPO4F/黒鉛フルセルの数百回にわたる安定な可逆作動に初めて成功した。濃厚電解液に固有なアニオンカチオン連続凝集構造が支配する状況は、従来の還元分解被膜による安定化機構に加え、(i)電解液のHOMO順位低下による酸化耐性向上(ii)脱溶媒和から脱カチオンへの変化に伴う活性化エネルギーの上昇による炭素導電助剤へのアニオン挿入抑制(iii)遷移金属溶出と拡散抑制に寄与し、電池システムとしての総合性能の大幅向上につながった。得られた発生電圧により期待されるエネルギー密度は、現在の市販品比で1.5-2.5倍が見込まれ、基礎研究成果がエネルギー貯蔵システムの大幅な性能指数向上へと導く具体的な実例を提示した。 充電過程で構造を「自己修復」するモデル電極材料Na2-xRu03を見いだした。従来の電極材料は、ゲスト種の引き抜きに伴い構造が不安定化して顕著に可逆性が低下するのに対し、当該電極材料は、ゲスト種引き抜きにともない秩序化するゲスト種欠陥が、残留ゲスト種との間に強い協力的クーロン引力を引き起こすことで結晶全体が逆に安定化する。大容量動作と安定動作を同時に可能にする新たな仕組みとして捉えることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでやや停滞気味であった先端分光手法を駆使した状態解析が軌道に乗りつつある。固体・液体双方の電子状態解析について、吸収・発光分析の励起エネルギー依存性まで包括的測定を行える状況が整い、バンド幅まで含めた全体像把握が可能になった。新材料の開発に伴って派生する特有の界面の状態解析についても、主に3DRISMを中心とする適切な計算手法を適用することで緻密な解析が行える目処が立った。また、先行して行ってきた種々の新材料・新界面開発の成果を統合・昇華し、エネルギー貯蔵システムとしての性能指数およびその進歩性を提示可能な状況となった。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに限定的な材料を対象に確立してきた新手法、新概念について、材料横断的検討による一般性の提示とともに、より高度な解析や高機能な新材料・新界面の開発につなげていく必要がある。そのため、今年度は材料合成、DFTB法に基づく時空間マルチスケールシミュレーション、3D RISM法に基づく電位繰り込みを見通した界面計算、をそれぞれ専門とする3名の研究分担者を新たにメンバーに迎え、研究を質・良ともに充実させていくとともに、特別推進研究の成果物としての学術論文発表を集中的に行う。
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Research Products
(28 results)