2015 Fiscal Year Annual Research Report
生命病態システムの数理モデリングとその個別化医療への応用のための数理的基盤の確立
Project/Area Number |
15H05707
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
合原 一幸 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (40167218)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 悟 東京大学, 医科学研究所, 教授 (50128104)
鈴木 大慈 東京工業大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (60551372)
森野 佳生 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任助教 (90712737)
|
Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 生命病態システム / 数理モデリング / 個別化医療 / 内分泌療法 / 動的ネットワークバイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 数理モデルに基づく前立腺癌の内分泌療法と他の疾患への展開 前立腺がんに関しては、PSA (前立腺特異抗原) という高感度のバイオマーカーが存在するため、数理モデルの性能を PSA データを用いて定量的に評価することが可能である。平成27年度は、研究計画で掲げる不十分な時系列データからの予後予測手法を確立する上で必要なアイディアについて検討を行った。具体的には、時系列データが不十分な場合の予測に必要となる情報を収集し、知見としてまとめると共に、予後予測手法の拡張可能性を入念に検討した。また、過去の2論文で提案した、間欠的ホルモン療法により再燃を防ぐための2つの異なる条件間の関係性を導いた。加えて、東京大学医学部附属病院で前立腺手術を受けた778症例の腫瘍マーカーPSAを経時的に測定し、当グループの先行研究で提唱した数理モデルの妥当性を検証した。
2. 動的ネットワークバイオマーカー理論の発展とその応用 本研究では、病態の変化を一種の複雑生体ネットワークの動的な状態遷移としてとらえ、疾患発症前後で先導して不安定化する生体ネットワークの部分ネットワーク (動的ネットワークバイオマーカー DNB) を効率的に検出する数理手法とアルゴリズムを考案する。平成27年度は、生命システムの複雑ネットワーク構造とDNBとの関係性の考察をもとに DNBを効率よく検出する数理的手法とアルゴリズムを考案して、実データに適用してその有効性を検証した。次に、がんの進化シミュレーションモデルを構築し、腫瘍内不均一性を生み出している進化原理の一端を明らかにした。また、DNB 検出に有用なノンパラメトリックテンソル推定のベイズ推定手法をあらたに考案し、推定精度の理論的証明および予備実験データで精度の高さを実際に確認した。さらに、不安定化後の状態の急変を防ぐ制御手法を考案した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. [数理モデルに基づく前立腺癌の内分泌療法と他の疾患への展開] では、不十分な時系列データからの予後予測手法の確立に向けて、非線形時系列解析手法、間欠的ホルモン療法のダイナミクスを記述した数理モデルの新規提案、改良、加えて臨床データを用いた理論の検証を行う準備が完了した。
2. [動的ネットワークバイオマーカー理論の発展とその応用] では、DNB 検出に有用な数理的手法とアルゴリズムを考案し実データに適用してその有効性を検証するとともに、さらに腫瘍内不均一性の解析や不安定化後の状態の急変を防ぐ制御手法を考案するなどの重要な成果を得た。これらの成果により、動的ネットワークバイオマーカーの実応用可能性や生命システムの動的な複雑ネットワーク因果性を詳細に解析する足がかりができた。
以上の成果を踏まえ、平成27年度は「おおむね順調に進展している」と判断される。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 数理モデルに基づく前立腺癌の内分泌療法と他の疾患への展開 時系列データが不十分な場合の予測に必要となる情報を収集し、知見としてまとめたので、平成28年度は予後予測手法の拡張可能性について引き続き解析・検討を行う。また、間欠的ホルモン療法により再燃を防ぐための2つの異なる条件間の関係性を元に、平成28年度では新たな知見に基づいて再燃阻止の介入が妥当であるかの検討を行う。さらに、平成27年度の成果に関して、随時臨床データと照合して妥当性の検証を行う。
2. 動的ネットワークバイオマーカー理論の発展とその応用 平成28年度は、平成27年度の成果をさらに発展させ、遺伝子発現情報のビッグデータを解析の対象として DNB の有効性を確認する。また、DNB を効率的に検出する数理手法とアルゴリズム、生命システムの複雑ネットワーク構造との関係性を解明するスパース推定などの機械学習手法を、平成27年度の生体ビッグデータ解析の準備および DNB の有効性の検証結果をベースに開発する。
|
Research Products
(18 results)
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] ロボット支援前立腺全摘術‐機能温存における開放手術との比較2015
Author(s)
福原 浩, 藤村哲也, 山田幸央, 新美文彩, 竹島雄太, 山田雄太, 高橋さゆり, 松本明彦, 宮嵜英世, 中川 徹, 久米春喜, 井川靖彦, 本間之夫
Organizer
第25回骨盤外科機能温存研究会
Place of Presentation
米子コンベンションセンターBIG SHIP(鳥取県米子市)
Year and Date
2015-06-27 – 2015-06-27
-