2017 Fiscal Year Annual Research Report
Plankton in polar regions-toward an understanding of their characteristics
Project/Area Number |
15H05712
|
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
原田 尚美 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 研究開発センター長代理 (70344281)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木元 克典 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地球環境観測研究開発センター, 主任技術研究員 (40359162)
広瀬 侑 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30616230)
西野 茂人 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 北極環境変動総合研究センター, 主任技術研究員 (10421885)
|
Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
|
Keywords | 北極海 / 海洋生物 / 海洋酸性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、極域に生息する海洋生物特に、食物網の底辺を支える植物・動物プランクトンに着目し、昇温や海洋酸性化に代表される環境の激変に対してこれら低次生物がどのように応答するのかを明らかにすることを目的としている。具体的には、西部北極海を研究対象海域とし、1)酸性化の脅威にさらされている炭酸塩プランクトンの応答の定量的評価、2)亜寒帯域に生息する植物プランクトン種の温暖化による極域進出の可能性の把握、3)他の海域に生息する種には見られない極域プランクトン種の特異的な機能を明らかにすることを目的としている。平成30年度は以下の研究を実施した。 1海洋観測:西部北極海に2点設置したセジメントトラップ係留系の回収ならびに再設置とともにCTD/採水観測、各種センサーによる観測も行う。また、回収された係留系に蓄積された1年分の各層の流向・流速データについて衛星観測による海氷広域分布データとともに時系列の解析を行う。以上の計画どおり実施した。 2海洋観測試料分析/データ解析ならびに遺伝子分析手法開発:回収された時系列セジメントトラップの生物起源粒子について検鏡による群集組成と18SrRNA配列を用いた定量的群集解析を実施する計画であった。検鏡観察による群集組成解析はほぼ計画通り実施したが、遺伝子解析については、再度、ホルマリン試料からの遺伝子レスキューの過程の見直しを実施しているところである。 3プランクトンの培養・飼育実験ならびにMXCT法開発:北極海由来のプランクトンの炭化水素合成系酵素遺伝子について、現在も引き続き探索を行なうとともに、炭化水素合成量がこれまでより単位細胞あたり1桁多くなるような生育培養条件を見出す事ができた。MXCT法については、新たにオートサンプラー開発を行い、プランクトンの骨格密度測定の効率を上げ、高精度な解析が短時間で可能になるようシステムの高度化を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
炭化水素合成能を持つ植物プランクトンの無菌化に成功し、独立行政法人製品評価技術基盤機構の特許生物寄託センターへの株の寄託と特許「微細藻類を用いた炭化水素の製造方法」(特願2017-139275)を出願することが出来た。特許申請が可能となった理由は、現生の地球上の生物として唯一、この種が合成する直鎖飽和炭化水素組成が原油と同じ組成である点にあり、将来のバイオエネルギーの可能性の幅を広げたことが大きい。 2点目として、本研究にて開発してきたMXCT法による動物プランクトンの殻密度計測技術は、過去に実施されたことのない全く新しい手法で海洋酸性化の生物影響を定量的に評価するものであり、現時点で世界で唯一海洋研究開発機構だけが持つ技術に成長させることが出来た。MXCT装置でも現在、特許申請を準備中であり、「密度計測用ファントムとの同時撮影による検体密度の定量化方法(仮)」という名称で標準物質の制作に関わる特許の申請を準備中である。他にもオートサンプラー一式と自動密度計測技術について、過去に例のない先進的なアイディアが盛り込まれており、これについて3件の特許出願を予定している。このように自然科学からの研究成果を論文としてのみならず、当初は想定していなかった複数の特許出願という形で、成果を出す事が出来そうであり、当初の目標を超える成果が見込まれる。さらに、これも本科研費の申請当初は想定していなかった嬉しい誤算として、研究代表者の所属先の海洋研究開発機構では、MXCTを用いた海洋酸性化研究が2015年、2016年の当機構を代表する研究成果となっているとその大きな学術的価値を認め、2017年、海洋酸性化研究に特化したMXCT2号機の新規製作を運営費交付金にて実施することを決定した。それにより2018年度以降、MXCT2台体制での研究推進が可能となった。以上のことから、この自己評価結果とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
1. 海洋観測 プランクトンが大増殖するホットスポットであるチャクチ海南部ホープ海底谷において、8-9月に韓国と米国の砕氷船を利用して研究航海を実施し、係留系による時系列観測を継続するとともに海洋観測を行う。また、セジメントトラップ係留系によって採取される10日毎の時系列生物起源粒子について、顕微鏡を用いた植物プランクトン、動物プランクトンの主要種の群集組成を把握するとともに過去のデータと比較してこの数年でどのような変化があったか、あるいは数年では変化のトレンドは見られないのか、結果を取りまとめる。これらの係留系データやこれまでの海洋観測データを解析することによって、対象範囲をバロー海底谷のホットスポットまで広げてそこの生物生産ホットスポットの形成・維持機構を明らにする。 2. 海洋観測試料分析/データ解析ならびに遺伝子分析手法開発 ホルマリン固定される生物起源粒子試料から研究に資する長鎖の遺伝子をレスキューする手法を完成させる。次世代シーケンサーによる生物起源粒子の18SrRNA配列を用いた定量的群集解析を実施し、全有機炭素に占める各種の寄与量の推定を行うと同時に、沈降粒子を構成する種の多様性に変化が起きているか、過去数年分のデータを比較しながら、時系列推移が生じているのか否かを明らかにする。 3.プランクトンの培養・飼育実験ならびにMXCT法開発 MXCTについては、新たに増設したサブミクロン精度の解像力を有するシンチレーター式CCDエリアイメージセンサについて、X線を可視光に変換するシンチレーター付きテーパーファイバー(光ファイバー)内部に発生する局所的な「歪み」について、格子状グリッドを数十ミクロンの間隔で細かく撮影し補正式を作ることで補正改善を目指す。
|
Research Products
(26 results)