2015 Fiscal Year Annual Research Report
酸化物系ナノチューブの高次構造チューニングによる物理光化学機能の深化と体系化
Project/Area Number |
15H05715
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20226658)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清野 智史 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90432517)
林 大和 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60396455)
楠瀬 尚史 香川大学, 工学部, 准教授 (60314423)
佃 諭士 東北大学, 多元物質科学研究所, 助教 (00451633)
後藤 知代 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (60643682)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 光触媒 / 酸化物ナノチューブ / 高次構造機能チューニング / ナノハイブリッド / バンドギャップ制御 / 環境・エネルギー材料 / 生体適合機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化物半導体ナノチューブ材料を高効率高次環境保全・エネルギー創製など次世代型サステナブルシステムへ適応しうる多機能集積型材料化することを目的とした研究を進め、下記の成果を得た。 酸化チタンナノチューブ(TNT)に結晶格子構造制御法を適用し、多様な元素固溶を実施した。その結果、CrやV、Nb、Ruなどの元素固溶TNT合成に成功し、固溶状態の差異、光学的性質および光化学特性の特徴を解明した。また固溶により可視光域に吸収帯生成を認め、可視光応答性光触媒機能の付与を確認した。 TNTと無機化合物や高分子とのナノ複合化プロセスを探索し、低次元ナノハイブリッド型材料創製を行った。同じ低次元構造を持つカーボンナノチューブ(TNT)を共存合成させることで、CNTを核としてTNTが取り囲んだ一次元型CNT/TNTコアシェル型ナノ複合構造を創製することに初めて成功し、電子顕微鏡により構造特性の解析を行うと共に、本材料が優れた分子吸着能や光触媒特性を示すことを見いだした。一方、TNT/アニリンモノマー系に紫外光照射することで重合反応し、TNT/ポリアニリンナノハイブリッドが生成できることを初めて見いだした。この反応では高次なTNT/モノマー相互作用による一次構造化に次いでTNT光化学反応誘起の重合が進むことが推定され、新たな反応経路およびナノハイブリッド材料創製が可能なことを示した。 TNTに過酸化水素を処理することでTNTに着色する現象を初めて認め、これはTNTの極めて大きな比表面積に由来し、TNT結晶構造が修飾されたことによるものであること、結果としてバンドギャップが大きく減少し、可視光応答性光触媒反応が発現することを初めて見いだした。さらにTNTおよび関連構造体の基礎的な生体適合性検証などを行い、構造由来の優れた性質を持つことから生体・医療用材料としてポテンシャルを持つことを検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では目的の達成のために、大別して、材料創製・構造機能チューニング、および構造解析・機能評価解析検証の2つのフェーズにより研究を実施している。 材料創製プロセスステージでは原子(結晶)構造レベルのチューニングならびにナノレベルハイブリッド構造化を実施しているが、前者では多様な元素固溶により光化学および物理化学機能を制御した材料の合成と機能検証が順調に進んでおり、可視光応答性材料を得る事に成功している。 また、異種材料である無機化合物や高分子との融合(ナノハイブリッド化)では、炭素材料や高分子との複合化に関する実験研究を進めており、これまでに想定した多様な形態での材料が得られている。但し、研究の過程で当初の予想に反し、モノマーが特異なナノチューブ構造の結晶構造と特異的相互作用を行った上で光照射重合している可能性が認められ、これについては追加の検証などを行うことで、その本質解明などを行っているほか、生体適合材料・医療材料としてもポテンシャルを持つとの基礎的な知見を得た。 材料の構造機能評価フェーズでは、合成した多様な材料を高分解能電子顕微鏡等により精査解析することで、化学的・結晶学的構造や低次元ナノハイブリッド構造の特異性などの解析検証は概ね順調に進んでいる。更に基礎物性・機能評価についても多様な条件での光触媒特性評価を進めており、可視光応答性の検証と特徴解明など概ね計画通りに進んでいる。更に一部機能評価については、研究分担者・協力者に加え、国内外の研究者の助言やサポートを受けながら評価方法の逐次検証と一部実験項目の追加を含めて進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従った研究フェーズ(材料創製・構造機能チューニング、および構造解析・機能評価解析検証)ごとに研究を進める。特に本研究では低次元酸化物ナノマテリアル材料へ、物性-特異ナノ構造相関に基づく物理光化学的機能などを協奏的・相乗的に発現・集約させると共に、その光化学的・物理化学的などの高次機能性発現メカニズムを解明することで、次世代型サステナブルシステムへ適応しうる多機能インテグレーション材料を創出することを目的としており、研究フェーズの材料創製・構造機能チューニングは重要である。このことから、研究期間前半では特にこの材料創製フェーズに重点を置いた研究を進めるが、その基礎物性・構造および機能も同時に進めながら知見をフィードバックすることで効率的な研究を推進する。 また、計画記載の研究分担者による研究項目の推進、連携研究者による支援のほか、関連研究分野における内外の研究者とは広く情報交換・意見集約も含めて進めるが、特に、構造解析・機能評価解析検証フェースに関連する項目については助言・サポートのほか、新たな解析手段(具体的には物理化学的相互作用検証、センシングなどを含めたナノ電気物性機能評価など)の実施内容、特に原子レベル機能発現の直接観察解析手法については、同解析手法を保有する国内外の研究者と情報・意見交換を進め、新たな共同研究実施も含めて推進する。構造解析・機能評価解析検証フェースでは、研究期間中期からはシステム化のための材料設計およびプロセス開拓についても計画に従って進めると共に、材料デバイス関連企業などの研究者からも助言を受けるなどを行いながら進める。
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Research Products
(42 results)