2017 Fiscal Year Annual Research Report
Toward understanding outer rise earhtquakes
Project/Area Number |
15H05718
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
小平 秀一 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 地震津波海域観測研究開発センター, 研究開発センター長 (80250421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 俊孝 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90359191)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | アウターライズ地震 / 日本海溝 / 津波 / 断層 |
Outline of Annual Research Achievements |
構造探査:宮城県沖において反射法地震探査データを取得した。得られた地下構造イメージでは、マントルに達するようなアウターライズ正断層を捉えられる可能性が示された。アウターライズ上に新しい単成火山群が形成されている海域を横切る測線でも稠密設置されたOBSを用いた構造探査データを取得した。日本海溝域と千島海溝域の構造調査で得られたデータを解析し結果を比較したところ、両海溝域でアウターライズ断層の発達度合いには顕著な違いがあることが明らかになってきた。前年度に取得したデータの初期的な解析結果からは、海山がアウターライズ断層の発達にはそれほど大きな影響を与えていない可能性が示唆された。 地震観測:2017年3月に日本海溝南部の福島茨城沖に設置した海底地震計を、2017年7月に回収した。解析結果は、海溝海側の太平洋プレート上に海山が複数存在する日本海溝南部においても、宮城沖と同様に海溝軸から100km程度海側までプレート内部の地震が発生していることを示している。また、2017年9月から2018年3月にかけて、宮城沖日本海溝の海溝軸周辺ならびに海溝海側斜面で、超深海型を含む35台の海底地震計を使用した海底地震観測を開始した。さらに、2018年3月から7月に海底地震計10台を用いて、海溝からやや遠い場所の地震活動を明らかにするための観測を宮城沖海溝海側斜面において実施した。 津波計算:アウターライズ地震の津波波形データベースの構築に着手した。津波計算に必要な海底地形データを整備するとともに、アウターライズ地震断層を仮定して津波の試計算を行った。高角なアウターライズ地震による津波は短波長成分に富むため、通常の津波計算では無視されている津波の分散性を考慮しなければならない可能性がある。そこで通常の長波理論と分散波理論の両方で計算を行い、両者の津波波形を比較したところ、明瞭な違いが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地下構造探査:稠密反射法探査に関してはこれまでに宮城沖北部から三陸沖南部、および福島沖の一部で調査が終了した。データ解析の結果、以下のような成果を得た。岩手県沖アウターライズ域のプレート形成時に海嶺が伝播した痕跡が見られる場所では、この太古から残る「傷跡」が断層活動に強い影響を与えている可能性が示唆された。宮城県沖アウターライズ上に多数の単性火山が存在している海域では最浅部の堆積層が薄くなっている一方その直下の地震波速度が遅いことがわかった。福島沖では、巨大な海山の存在がアウターライズ断層の発達にはそれほど大きな影響を与えていない可能性が示唆された。日本海溝での結果と千島海溝での結果を比較すると、両海溝域でアウターライズ断層の発達度合いには顕著な違いがあることが明らかになった。また、潜在断層マッピングに関しては本研究でこれまでに得られたデータに加え、海溝周辺で得られた既存データを最大活用することによって、海溝軸から30~50kmの範囲では、当初計画より早めに断層同定・断層マッピングを終了している。 海底地震観測:2015年に日本海溝北部1933年昭和三陸地震の震源域で実施した観測の成果は論文としてまとめて公表した。また、日本海溝南部福島茨城沖や宮城沖で実施した観測で得られたデータの解析も進めており、海底地形に見られるホルスト・グラーベンを形成する正断層だけでなく、地形的に不明瞭な場所でもプレート内正断層の存在を示唆するような地震活動が捉えられている。これらの成果を活用し、津波予測に向けた断層マッピングを進めている。 津波計算・津波データベース作成:H30年度以降の本格的な津波波形データベースの構築に向けて、海底地形データの整備などの津波計算の準備と試計算を実施した。この結果をもとにデータベース構築に必要な計算資源量や利用すべき計算法などを見積った。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)地下構造探査に関しては、稠密反射法探査データの取得が残っている福島沖中部・南部域、また、天候等によっては三陸沖の一部で調査を実施し、本研究での稠密反射法探査を終了する予定である。 (2)地震観測に関しては、これまでの観測からデータが不足している宮城沖海溝軸付近を中心に観測を実施し、本研究での地震観測を終了する予定である。さらに、上記を含んで本研究で得られたデータ、既存データを最大活用し、福島沖から三陸沖にかけての海溝軸から150kmの範囲でアウターライズ潜在断層のマッピングをすすめる予定である。 (3)津波計算・津波データベース作成に関しては、上記実施項目(1)(2)で作成されるアウターライズ潜在断層の断層情報を基に、平成30年度時点で同定が終了した潜在断層に対して、S-net観測点での津波波形、および沿岸地域での津波波形の計算を進める。その際、断層すべり量やすべりの向きなどのパラメータを変更しながら、断層すべりの不確実性による誤差評価の検討を行う。
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Research Products
(27 results)