2018 Fiscal Year Annual Research Report
窒化物ナノ局在系の物性制御によるテーラーメイド光源の実現
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15H05732
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 養一 京都大学, 工学研究科, 教授 (30214604)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
船戸 充 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70240827)
石井 良太 京都大学, 工学研究科, 助教 (60737047)
岡本 晃一 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50467453)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 窒化物半導体 / 3次元構造 / ナノ局在 / 多波長発光 / テーラーメイド光源 |
Outline of Annual Research Achievements |
(Al,Ga,In)N系半導体における(1)3次元マルチファセット構造による発光波長合成,(2)分極制御,(3)プラズモニクス効果などによる高効率発光に着目し,(4)近接場光学顕微鏡(SNOM)による時空間分解分光などにより,発光機構の理解と制御への指針を明確にする.このことによって,半導体ナノ構造中から任意の波長の光を内部量子効率100%で発光させるといった物理限界に近づき,究極の高品位照明光源に繋がるものと確信している. (1)については,(11-22)半極性GaN基板上に作製した,オール非極性面フリーの3次元GaNファセット上InGaN量子井戸のMOVPE成長において,各ファセットにおけるIn組成が,ファセット形状や成長温度,原料供給比などによってどのように変化するかについて詳細な評価・解析を行い,この3次元構造上に白色スペクトルを合成することに初めて成功した.さらに,3次元AlNステップバンティング構造上にAlGaN量子井戸を作製し,Gaリッチ発光局在構造の形成による発光高効率化とその物理機構を解明した.. (2)については,内部電界低減を目指して半極性r面AlN基板上への高品質AlGaNエピタキシャル層の成長とpn電導度制御に成功し,AlGaN系量子井戸を活性層とする深紫外発光ダイオードの試作に成功した. また,(3)については,緑色発光するAlコートInGaN量子井戸のフォトルミネッセンスマッピングを行い,表面プラズモン共鳴による電界増強によって,量子閉じ込めシュタルク効果(QCSE)が低減されることを見出した. さらに,(4)については,SNOMによる青色および緑色LEDのデバイス動作時の発光マッピングを行うために,表面のp型GaNの膜厚を数10nmと特別に薄くした試料を準備し,測定のための準備を完了した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テーラーメイド白色光源の開発を目指した,InGaN系3次元構造の研究成果については,第16回照明と科学と技術に関するシンポジウム(LS16;英国,Sheffield)にて基調講演(2018年6月)を行い,照明の多角的な側面からコメントを得て,目標とする多波長光源開発への指針とすることができた.また,当該研究に関連して,博士課程学生の松田は,第10回ナノ構造・エピタキシャル成長講演会において発表奨励賞,第1回結晶工学 ISYSE合同研究会において研究発表奨励賞を受賞するなど高い評価を受けている. 深紫外光源開発に関しては,半極性r面AlN基板上にAlGaN系深紫外LEDの試作に初めて成功した[APEX 11,061001(2018)].この半極性構造は極性構造よりも,AlGaN量子井戸中の内部電界が小さく,QCSE効果の低減によるLED高効率化に関して大きなポテンシャルを有している. さらに,プラズモニクス関連では,詳細な機構の解明とそれに基づく励起子ダイアミクス制御等について実績を上げており,窒化物半導体ワークショップ(IWN2018,金沢)において口頭発表を行った.他にも関係する研究テーマにて応用物理学会で発表した修士課程学生の村尾がポスター賞を受賞するなど, 高く評価されている.
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Strategy for Future Research Activity |
極性面フリーの3次元InGaN量子井戸構造を実現するために,従来の極性面ではなくて半極性面基板を用いるという発想は,本研究プロジェクトの作成段階で提案されたものである.当初は,各ファセットからの発光色は,紫色から青緑色の狭い範囲でしか制御できていなかったが,今年度は,結晶成長技術が進展し,純白色のスペクトル合成に成功した.今後は,3次元構造のpn伝導度制御を行い,蛍光体フリーな高効率白色LEDの実証に取り組んで行く.さらに,非極性面マイクロ構造上のInGaN量子井戸の輻射再結合寿命は,極性面上のそれよりも大幅に高速であり多波長による多重スイッティングも可能であることから,次世代の可視光LED通信技術であるLi-Fi応用にも大きな可能性を秘めており,この観点からの研究も推進する. また,半極性r面上のAlGaN量子井戸構造は,QCSE効果の低減による高速な輻射再結合が実証されており,今後の量子井戸構造の最適化とドーピング技術の向上により,深紫外LEDの高効率化に寄与しうるものと確信している.さらに, AlNのステップバンティング領域上でGaリッチのAlGaN量子細線構造が形成されており,発光局在中心として有効に働いていることが見出されており,深紫外多波長発光を目指すためのAlGaN系3次元構造の核となるものと期待している. さらに,InGaN多重量子井戸構造の表面で生成した金属(Ag,Al)中の表面プラズモンからInGaN量子井戸中の励起子へのエネルギー移動が,フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)と呼ばれる近接場相互作用により生じており,当初予想していたよりも深部の量子井戸までプラズモニクスの発光増強が生じていることを見出した.この効果は,実用的な多重量子井戸構造からなるLEDの高効率化に寄与しうるものであり,この効果を積極的に利用しうる金属材料や構造の最適化を図る.
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Research Products
(34 results)