2017 Fiscal Year Annual Research Report
Renovating solutions and applications of coefficient inverse problems for partial differential equations
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15H05740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 昌宏 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (50182647)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 玄 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (50118535)
羽田野 祐子 筑波大学, システム情報系, 教授 (60323276)
磯崎 洋 立命館大学, 理工学部, 授業担当講師 (90111913)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 境界値逆問題 / 係数決定逆問題 / 非ニュートン流体 / 非整数階偏微分方程式 / リーマン計量決定逆問題 / 一意性・安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
課題(A)楕円型方程式の係数決定逆問題:引き続き一意性を中心に研究を進めた。対象となる方程式を非整数階偏微分方程式に拡大し、境界値逆問題の研究を開始した。これは、課題(A)と課題(D)を結合した係数決定逆問題であり、今後の研究の進展がおおいに期待できる。 課題(B)リーマン多様体におけるリーマン計量決定逆問題:線型化問題について一意性を解決した。線型化しない場合ならびに一般化した場合の一意性について研究を継続している。課題(C)流体力学におけるさまざまな非定常方程式の係数決定逆問題: 粘弾性体に関連した積分偏微分方程式に対する係数決定逆問題を考察し、その一意性、安定性を確立した。さらに、係数決定逆問題の数値手法のアルゴリズムの構築や、非ニュートン流体の係数決定逆問題に関して Carleman 評価による手法を開発し、逆問題の一意性、安定性の確立を開始した。さらに専門書を出版し、課題(C)の基礎となる Carleman 評価による逆問題解析手法を包括的に解説し、本計画事業の発展と共に若手研究者の効率的な研究手法の習得に役立てることを期した。課題(D)非整数階偏微分方程式の係数決定逆問題:新たに非整数階偏微分方程式の初期値・境界値問題などの順問題の研究を課題に追加し、 順問題の解の一意存在、漸近挙動、時間解析性、最大値原理など今後の逆問題研究の基礎となる知見を確立した。そのような順問題の知見に基づいて、対応する逆問題の研究を遂行した。課題(E)諸科学技術分野からの逆問題の課題提起と応用: 不均質媒質中の汚染物、特に放射性セシウムの土壌中の異常拡散を考察した。社会的に重要な課題としては該当する地域の長期汚染予測を精度よく作成することであるが、そのためには、直接的に評価が困難である土壌中の異常拡散を規定する物性定数などのパラメータを決定する逆問題の解析と数値手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
課題(C)について:解析手法の基礎をなすCarleman 評価が、古典的な偏微分方程式だけではなく、より広い範囲の方程式、例えば履歴項も持つような数理物理に現れる広範な微分方程式に対して、本研究事業によって証明されている。それを受けて、1981年以来研究が進められてきた係数決定逆問題の基本的な理論であるCarleman 評価による一意性・安定性の研究を完成できる見通しがついたこと。そのような成果に関して、連携研究者のOleg Imanuvilov とさらに広範な専門書を執筆中である。 課題(A)に関連して:研究代表者は研究分担者:磯崎洋、中村玄と共に、係数決定逆問題のもう1つの基本的な理論である境界値逆問題(ディリクレ・ノイマン写像による定式化)についても、国際的に評価されている成果を挙げ続けていること。さらに、本研究事業により、係数決定逆問題の主要な2つの方法論である Carleman 評価によるものと境界値逆問題(ディリクレ・ノイマン写像による定式化)を駆使して、国際的な研究の中心になっていることがある。課題(D)について:逆問題研究を支援するような非整数階偏微分方程式を適切な関数空間で取り扱った仕事は極めて少ない。そこで当初の計画の想定を超えて、課題を逆問題とともに順問題の包括的な研究に拡大し、古典的な偏微分方程式も包含するような大きな理論体系の構築を目指していること。課題(E)について:産業界や異分野で現場での現実の課題を解決するために「逆問題」が必要不可欠であることが広く認識され、本計画による研究遂行により、数学のコミュニティという狭い枠を超えて社会において逆問題の重要性と数学解析の必要性が広く認識されるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
課題(B):リーマン多様体におけるリーマン計量決定逆問題については、当初から困難さが想定されていたが、進行状況が比較的やや遅れている。理由は技術的な困難さの他に、迅速に効果が上がることが期待される他課題の遂行に時間を割いたためである。また別の要因としては、招へいを予定していた海外の研究者の来日が所属機関の都合により延期になったこともある。次年度以降には、招へいの延期分も含めて連携研究者や海外研究者を集中的に投入して解決を図る。それにより、課題(B)について計画を予定通りに遂行できると判断している。 課題(A)について:順調に進行しており、当初の計画、方法で推進していく。 課題(C)について:解析手法の基礎をなすCarleman 評価を、古典的な偏微分方程式に限定されない履歴項も持つような数理物理に現れる広範な微分方程式に対して確立していく。本研究事業の視野にある方程式には、課題(D)の非整数階偏微分方程式も含まれており、課題(D)とも融合させて研究を進行させる。方法論の拡大・深化を伴って、課題(C)について決定的な成果を収めることができる。そのような成果の集大成として、広範な専門書を公表する予定である。課題(D)について、当初の計画の想定を超えて、逆問題とともに順問題の包括的な研究へと拡大し、非整数階偏微分方程式に関する順問題ならびに逆問題双方にわたり、本研究事業の規定の期間内に、出来るかぎりの完成度と質を伴う成果を確立する。課題(E)について、産業界や異分野で現場での現実の課題を解決するために「逆問題」が必要不可欠であることが広く認識されるようになったが、そのような異分野連携の活動を広く展開していく。数学をコアにしたそのような活動は少なく、研究遂行のノウハウや成功事例を解説した研究代表者による単行本を執筆中である。
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Research Products
(17 results)