2016 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙赤外線背景放射のロケット観測でさぐる銀河ダークハロー浮遊星と宇宙再電離
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15H05744
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
松浦 周二 関西学院大学, 理工学部, 教授 (10321572)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 耕司 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (60579960)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 光赤外線天文学 / ロケット実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,銀河のダークハロー内の浮遊星(IHL: Intra-Halo Light)や宇宙再電離期の電離源天体の光を,近赤外線の宇宙背景放射(CIB: Cosmic Infrared Background あるいは EBL: Extragalactic Background Light)として観測することを目的としている.この研究は,CIBER-2(Cosmic Infrared Background ExpeRiment 2)と名付けたロケットに実験により実施する. 我々が過去に実施したCOBE, IRTS, 「あかり」やSpitzerなどの衛星観測およびロケット実験(CIBER)の結果から,近赤外線の宇宙背景放射は予想外に明るいことがわかってきた.つまり,観測される宇宙背景放射の輝度は予想されていたような系外銀河の積算光よりもはるかに明るいのである.特に,平成28年度末にThe Astrophysical Journal誌に受理されたCIBER実験の結果についての論文(Matsuura et al., ApJ, 839:7, 2017)では,このような宇宙背景放射の超過の原因が太陽系内の前景放射である可能性を除外し,超過成分が銀河系外に存在する可能性が高いことを示すことができた.この未知放射成分の起源の解明は重要かつ急務であり,これを目的とするCIBER-2実験では観測波長の可視域への拡大や格段の感度向上が得られる観測装置を新たに開発している. CIBER-2の観測装置の基幹である光学系は日本で開発・製作し,国内での性能試験を経て,研究パートナーであるカリフォルニア工科大学へ搬送後,ロケット搭載機器として組立を行なう.平成28年度は,試作望遠鏡について,振動試験や低温での光学試験などの性能評価を行なった.また,光学系の搭載品(FM)の製作も部分的に実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時の計画では,望遠鏡とカメラ光学系の両者を平成27年度中に製作し,性能評価試験を実施する予定であったが,カメラ光学系を搭載するロケット内径寸法に収めるために多くの設計変更が必要となり,それに伴うレンズ仕様の変更が発生し,開発のめどを立てることに多くの時間を要したことが,平成28年度までの計画遅延の主因である.具体的には,改訂した光学設計には非球面レンズを多用する必要性が生じ,それらのレンズの急峻な曲面に広帯域無反射コートを製造する技術が国内業者になく,これを製造工程にまで立ち入り新たに開発する必要が生じた.開発の結果,平成27年度にはレンズ製造,平成28年度にはそれらを用いた光学系の製作を行なうことができた. 平成28年度にも計画遅延が生じた.これは,製作した望遠鏡について,ロケットへの搭載に必要な振動試験を実施した結果,望遠鏡の支持部に機械的な歪みが発生し,機械強度設計に問題があることがわかった.これまでに行なった構造シミュレーションを見直したところ不備が見つかったため,平成29年度は,これを改めて実施し機械強度設計に反映させたうえで改良した構造部品を用いた振動試験を実施する.この改修実験により計画の遅延が生じるとともに,計画していなかった物品調達が新たに必要となる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後もCIBER-2光学系の開発と製作を進め,平成29年度中旬の光学系の完成と米国への搬送を目指す.前述の通り,計画は当初の予定より遅延しているが,問題点の洗いだしはできており,これらを着実に解決して研究を進める.これまでの遅延の回復は難しいが,より良い観測装置に仕上げることを優先して開発を継続する. 平成29年度は,改修した望遠鏡について振動試験を含むさまざまな光学評価試験を実施し,すでに製作が済んでいるレンズ光学系とを組み合せた最終評価試験を行ったうえで,米国へ搬送する.現地では,検出器を光学系へ組込み,ロケット打上げ時のコンフィギュレーションでの冷却光学試験を実施する.
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Research Products
(16 results)
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[Journal Article] New Spectral Evidence of an Unaccounted Component of the Near-infrared Extragalactic Background Light from the CIBER2017
Author(s)
Matsuura, Shuji; Arai, Toshiaki; Bock, James J.; Cooray, Asantha; Korngut, Phillip M.; Kim, Min Gyu; Lee, Hyung Mok; Lee, Dae Hee; Levenson, Louis R.; Matsumoto, Toshio; Onishi, Yosuke; Shirahata, Mai; Tsumura, Kohji; Wada, Takehiko; Zemcov, Michael
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 839
Pages: 7 (15pp.)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Low-Resolution Near-infrared Stellar Spectra Observed by the Cosmic Infrared Background Experiment (CIBER)2017
Author(s)
Kim, Min Gyu; Lee, Hyung Mok; Arai, Toshiaki; Bock, James; Cooray, Asantha; Jeong, Woong-Seob; Kim, Seong Jin; Korngut, Phillip; Lanz, Alicia; Lee, Dae Hee; Lee, Myung Gyoon; Matsumoto, Toshio; Matsuura, Shuji; Nam, Uk Won; Onishi, Yosuke; Shirahata, Mai; Smidt, Joseph; Tsumura, Kohji; Yamamura, Issei; Zemcov, Michael
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Journal Title
The Astronomical Journal
Volume: 153
Pages: 84 (19pp.)
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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