2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05756
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村上 正浩 京都大学, 工学研究科, 教授 (20174279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三浦 智也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10378804)
石田 直樹 京都大学, 工学研究科, 助教 (70512755)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 分子変換 / 光 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機合成化学には医薬品や高機能材料に至るまで、社会が必要とする様々な有機化合物を合成する効率的な手法を提供することが求められている。本研究では入手容易な原料をより直截的に変換する革新的な手法を開発することを目的として光と金属の特性に着目した検討を行っている。当該年度の代表的な成果は以下の通りである。 1.アルキルベンゼンと臭化アリールのクロスカップリング反応 アルキルベンゼンは石油化学プロセスで大量に生産されており、安価かつ大量に入手できる。これらは主に溶媒として利用されているほか、芳香族求電子置換反応によって様々な芳香族化合物の原料として利用されている。本研究では紫外光とニッケル触媒を用いることで、アルキルベンゼンのベンジル位炭素-水素結合を切断して、臭化アリールと直截カップリングする反応を開発した。従来はベンジル位炭素-水素結合のハロゲン化、もしくはメタル化を経由して同様の変換が行われていたが、本反応は一段階で炭素-炭素結合を形成でき、より直截的で原子効率に優れている。 2.シクロプロパンとベンゼン環が交互に結合したC3対称環状化合物のエナンチオ選択的な合成 C2対称性を有するキラル化合物はその有用性が広く認知され、様々な誘導体が合成されている。一方、C3対称性を有する化合物も不斉合成や分子認識に有用であると考えられるが、効率的な合成法がほぼないために、その応用検討は大きく立ち遅れている。本研究では、市販されている末端アルキンとアジドを原料として、シクロプロパンとベンゼン環が交互に結合したC3対称環状化合物を光学的に純粋な形で合成する手法を見出した。また、この手法を部分的に重水素化された基質に展開することで、水素と重水素の位置異性に基づくキラリティを持つ誘導体を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画のとおりに、光と金属の特性を活かして、入手容易なアルキルベンゼンと臭化アリールを直截的にクロスカップリングする反応を開発した。この成果は Asian Journal of Organic Chemistryに掲載された。また、当初の計画とは異なるが、検討の過程で、入手容易な末端アルキンとアジドからシクロプロパンとベンゼン環が交互に結合したC3対称環状化合物のエナンチオ選択的に合成する手法を見出した。この成果はAngewandte Chemieに掲載され、高い評価を受けている。これらに加えて、入手容易な原料を直截変換する手法を多数開発し、査読付き国際学術雑誌に論文として報告しているほか、様々な興味深い新規反応を見出しており、現在投稿準備中である。これらを踏まえて「②おおむね順調に進展している」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に得られた知見を基盤として、引き続き入手容易な原料を直截的に変換する斬新な反応開発や新物質の創出に挑戦する。具体的には(1)塩化メチレンと臭化アリールの選択的クロスカップリング反応、(2)シクロプロパンと芳香環が交互に結合した環状化合物の合成と機能の探索に取り組む。 すでにこれらに関して予備的検討を行い、ある程度の知見が得られている。これらに関して、①溶媒や触媒の配位子などの反応条件検討、②反応機構の解明を目的とした量論反応や量子化学計算、③有用物質や新規物質の合成検討や天然物の分解・改変検討を行う。特に合成した新物質の物性については、当該分野を専門とする研究者と共同研究を行うことを予定している。 また、以上のような合理的戦略に基づいて新反応・新化合物を着実に開発する一方で、斬新な反応の発見を目指したい。合成実験を実施していると、予想していた反応のみならず、説明のできない想定外の結果が得られることがある。想定の反応のみに囚われることなく、副生成物も可能なかぎり同定して、これらの新規性・有用性について随時検証する予定である。
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Research Products
(11 results)