2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05757
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山元 公寿 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (80220458)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 建 (アルブレヒト建) 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (50599561)
神戸 徹也 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (00733495)
|
Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
|
Keywords | デンドリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の計画項目は次の3つである。1.精密金属集積合成の確立 2.サブナノ白金粒子構造の解明 3.サブナノ粒子の機能解明
1.精密金属集積合成の確立-19原子サブナノ粒子合成のためのテンプレートを設計し、合成した。これに付随して当初の計画に従い10原子から19原子のサブナノ粒子合成のためのテンプレートとなる各種デンドリマーの合成を達成した。それぞれのデンドリマーの金属塩精密集積挙動をタイトレーションより明らかにして、分子リアクターとしての機能を確認できた。 2.サブナノ白金粒子構造の解明-原子数を制御し精密合成したサブナノ白金粒子について、原子分解能を有する走査透過型電子顕微鏡(STEM)と高輝度放射光源を用い測定したEXAFSおよび理論計算を組み合わせ解析した。STEMより原子数を直接カウントすることに成功 選択的なクラスター生成を確認した。Pt19のEXAFS実験結果は、クラスターモデルからFEFF8シミュレーションを用いて導き出されるスペクトルと比較的良い一致を示した。より小さいサイズのクラスターについては30Kという極低温で測定しているのにもかかわらず デバイワラー因子が極めて大きく、極小クラスター特有の動的特性が発現していると考えられる。この点についてはSTEMからも示唆されており、機能の特異性などとの関連をさらに精査する必要がある。 3.サブナノ粒子の機能解明-デンドリマーを大量合成し、鋳型として用いることでサブナノ白金粒子の10 mgスケール合成を達成、カーボン担持の形態でXAFSの透過法測定や触媒活性、磁性評価に用いた。環状アルカン化合物の1つであるインダンの酸化反応における触媒活性を評価したところ、白金60原子サブナノ白金粒子が市販白金ナノ粒子触媒に比べ高活性と判明した。また磁性は筑波大学大塩教授の支援でSQUID測定を実施し、常磁性の発現を定性的に確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本基盤研究では、当初の研究計画・方法として ①精密無機合成プロセス「精密金属集積合成法」の確立、②新物質群「超原子」創製、の項目を挙げて、無機ナノ材料の新領域を開くことを目的としていた。28年度までに項目①、②を重点的に展開し、順調に進展し以下の成果が得られた。 項目①:当初の計画に従い10原子から19原子のサブナノ粒子合成のためのテンプレートとなるデンドリマー合成を達成した。それぞれのデンドリマーの金属塩精密集積挙動をタイトレーションより確認でき、原子数を制御したサブナノ粒子合成の原子制御分子リアクターの機能を実証できた。 項目②:本項目に掲げている超原子の創製と物性解明に関する成果も得られている。これまでに、4種類の超原子の合成を達成した。まず、超原子として知られているAl13-超原子の溶液合成に初めて成功した。その他Ga3H2, Ga12, Bi12の超原子を発見することができた。理論計算と合わせ酸化還元電位、XPS, 発光、吸収スペクトルなどの基礎物性を明らかにできた。このほか、酸化すず、酸化バナジウム、酸化ガリウムなどの半導体サブナノ粒子の合成にも成功している。また、デンドリマーを大量合成し、鋳型として用いることでサブナノ白金粒子の10 mgスケール合成を達成、触媒活性や磁性機能を解明できた。 【当初の計画外の成果】 精密無機合成プロセスとして、新たに有機物還元剤法(共同)、水素還元焼成法、還元カプセル法、など新しい合成法を開発できた。創製できるサブナノ粒子の幅が格段に拡張された。さらに、環状多核白金錯体前駆体を用いて、従来のデンドリマーでは困難であったPt5-Pt11までのシングル原子数サブナノ粒子の合成に成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究が中盤を迎えるため、初期の探索型の幅広い研究展開から、確実に成果を出すため選択と集中を実行する推進方策をとる段階に入ったと判断する。超原子の創製と機能解明に向けて、新しい物質群を開拓することを目的としており、効率の高く突出した成果を得るために、これまでの成果を基盤として、研究の焦点を絞り、集中した展開に心がける。 計画では、対象とする元素も幅広く設定をしていたが、これまでの成果を踏まえて、絞り込みを行う。Al, Ga、Biなどの超原子を発見したことから、典型元素に焦点当てる。典型元素は価電子数が明確で、結合も共有結合性が強いため、設計と安定性が確保できると判断できる。さらに、これまでのデンドリマーでは、5-10原子の合成が困難であったが、代表者らが開発した環状前駆体錯体を利用したサブナノ粒子合成に成功している。本法により予想以上の原子数のサブナノ粒子の合成も可能となり、バリエーションが拡張する。したがって、従来にはないシングル原子数のサブナノ粒子の合成法として重要性が極めて高く、いち早く確立するために集中した展開を行う。このためにも、従来まで、基礎知見の多い、11、12族の貴金属元素族に焦点を絞る予定である。元素の組み合わせは無限大にあるわけであるが、原子数の精密制御と機能を確実にするためにも、まずは単一元素を中心として研究を推進する。 現在、研究は順調に進んでおり、当初の計画外の成果も得られている。以上から、成果を確実に得るためにも、研究対象の選択と集中は行うが、大幅に研究計画を変更する必要はない。 サブナノ粒子は新物質であるため、構造解析や計測が極めて困難と予測される。また、その応用も触媒、エレクトロニクス、医療など幅広い。従って、数多くの専門家らと緊密に連携して研究を遂行するように心がける。
|
Research Products
(11 results)