2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H05766
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
貝沼 亮介 東北大学, 工学研究科, 教授 (20202004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沼 郁雄 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主席研究員 (20250714)
荒木 慶一 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50324653)
大森 俊洋 東北大学, 工学研究科, 助教 (60451530)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 超弾性 / 形状記憶合金 / マルテンサイト変態 / 組織制御 / 鉄合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、析出強化を通してFe系で初めて室温超弾性を実現したFe-Ni-Co-Al基系およびFe-Mn-Al-Ni系超弾性合金を対象に、現状これらの合金系が共通して抱える諸問題(粒界脆化、低超弾性歪、低繰り返し特性)を解決したうえで制震部材等への実用化を目指している。 平成27年度には、既存の熱力学データベースを用いた計算状態図(CALPHAD)法によりFe-Ni-Co-Al-Ti系状態図を計算し、脆化を招く粒界析出相を不安定化させる合金組成を探索した。その結果、AlとTi濃度の比率に関わらず、粒界を脆くするβ(もしくはNi2AlTi-ホイスラー)相の出現は不可避的であることが判明した。また、マルテンサイト変態温度に及ぼす添加元素の影響について系統的な調査を行い、今後の合金設計のための指針を得た。この結果を踏まえ、今後の研究には、集合組織によりβ相を抑制可能な板材と不可能な線材に分けて研究を進めていく必要が生じた。また、本合金系について繰り返し熱処理による異常粒成長の発現の可否について調査したが、明確な出現は見られなかった。これは、従来の異常粒成長は、bccマトリックスへのfcc析出相を利用していたのに対し、本系ではfccマトリクスにbcc析出相だからであると解釈される。 一方、Fe-Mn-Al-Ni系に関しては、結晶粒界強度に及ぼす微量添加元素(B,C,Si等)の影響について調査したが、特に有効な添加元素を見出すことは出来なかった。しかし、異常粒成長に関してはその兆候が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)粒界析出の抑制について:予定通り、既存の熱力学データベースを用いた計算状態図(CALPHAD)法によりFe-Ni-Co-Al-Ti系状態図を計算すると共に、実験との比較を行うことができた。一方、Fe-Mn-Al-Ni系に関しては、予定通り結晶粒界強度に及ぼす微量添加元素(B,C,Si等)の影響について調査した。 (2)整合析出組織の制御について:Fe-Ni-Co-Al-Ti系の時効熱処理とマルテンサイト変態温度や変態ヒステリシスの関係を調査することができた。 (3)結晶粒組織制御について:Fe-Ni-Co-Al-Ti系について、予定通り繰り返し熱処理による異常粒成長の発現の可否について調査し、異常粒成長は起こしづらいことを明らかにした。一方、Fe-Mn-Al-Ni系に関しては異常粒成長が得られることを確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)粒界析出の抑制について:Fe-Ni-Co-Al-Ti系合金の線材に対しては、板材で行うことのできた結晶粒制御法が利用できないことが判明した。従って、線材については板材と異なる加工熱処理条件を新たに検討し、平成27年度と同様の研究を遂行する。今後、もし線材において粒界析出を抑制できないことが判明した場合には、Fe-Ni-Co-Al-Ti系合金の線材開発は断念し、Fe-Mn-Al-Ni系合金に集中して研究を進めるものとする。具体的には、粒界析出の抑制と大気中熱処理の酸化を防止する目的でCr添加したFe-Mn-Al-Ni-Cr系合金について研究を行う。 (2)整合析出組織の制御について:平成27年度と同様の研究を遂行する。特にFe-Ni-Co-Al-Ti系合金と並んで素材コスト的に魅力があるFe-Mn-Al-Ni系合金についても系統的に実験を行い、fcc マトリックスとbcc マトリックスでの特性の違いについて明確にする。以上を通して、両合金系について最適析出組織の設計指針を確立する。 (3)結晶粒組織制御について:平成27年度の研究より、fcc相がマトリックスになるFe-Ni-Co-Al-Ti系合金では異常粒成長を引き起こすのが困難であることが判明した。一方、Fe-Mn-Al-Ni系合金では、異常粒成長の生成が確認された。そこで、今後は、Fe-Mn-Al-Ni系合金を中心に異常粒成長の発現条件に関する系統的な研究を進める。 (4)超弾性の評価について:平成27年度のFe-Ni-Co-Al-Ti系に引き続きFe-Mn-Al基状態図の計算を行い、マルテンサイト変態の安定性に関する考察を行う。その結果を利用して、Fe-Mn-Al-Ni系で得られる超弾性応力の低温度依存性の起源を解明する。
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Research Products
(11 results)