2018 Fiscal Year Annual Research Report
Studies in structural physiology of channels
Project/Area Number |
15H05775
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
藤吉 好則 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 寄附研究部門教授 (80142298)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大嶋 篤典 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 教授 (80456847)
谷 一寿 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 特任教授 (20541204)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | クライオ電子顕微鏡 / 構造生理学 / チャネル / 膜タンパク質 / 単粒子解析 / 結晶学 |
Outline of Annual Research Achievements |
6種類のチャネルに関する研究課題の中で、ギャップ結合チャネル(研究課題i))は、主に単粒子解析法を用いた研究が大きく進んだ。イネキシンの構造をGraDeR法を開発し単粒子解析法で解析した結果を発表していたが、脂質膜内で構造を解析するためにナノディスク法を用いて解析した結果、脂質がギャップ結合チャネル内で2重膜構造を形成することでチャネルを閉じる機能を示唆する結果を得た。イネキシンのN末端側は脂質膜に押し上げられた構造を形成するという予期しなかった構造変化が明らかになった。それで、N末端側を除いた変異体の構造も同様に単粒子解析法で解析することによってそれを確認した(論文投稿)。この脂質が関与したチャネルのgating機構を示す結果は大変興味深い。水チャネル(研究課題iii))は、脳に多くの発現がみられるAQP4とその阻害剤との複合体の構造を電子線結晶学を用いて高分解能で解析した。イオンチャネル(研究課題iv))については、Na+チャネルの構造解析を行うとともに、バクテリア由来のCa2+チャネルを同定した(論文投稿)。胃のプロトンポンプHK-ATPase(研究課題v)については、構造解析結果を昨年Nature誌に発表したが、さらに研究を進めて高分解能の構造解析と機能解析を行った(論文投稿)。タイト結合チャネルのカギとなるクローディン(研究課題vi))については、これまで、クローディン-15,-19の構造を2つのScience誌に発表してきたが、さらにクローディン3の構造を解析し、3番目のへリックス上のプロリンの位置での曲りの有無がタイト結合の性質に影響を与えることを見出し、その位置にはプロリン以外にアラニンかグリシンであるので、クローディン3のこれらの点変異体も解析して、へリックス3の曲りがストランドの性質に影響することを明らかにした(Nature Comms, 10)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
6種類のチャネルに関する研究課題を総合的に進めており、計画以上に進捗している。特に、ギャップ結合チャネルは、脂質が関与するチャネルのgating機構を示唆する結果を得ており、大変興味深い重要な結果を得ることができた。新しいgating機構を発見したことは、予想外の大きな成果であると思われる。ギャップ結合チャネルのチャネル径は18Å程度と大きく、可溶性分子を透過するが、完全にイオン透過を止める速いgating機能も有している。今回の解析から脂質分子がギャップ結合チャネル内に入って脂質2重膜構造を形成することでチャネルを閉じる機能を担っていることを示唆する結果を得た。また、イネキシンのN末端側は脂質膜に押し上げられた構造をとっており、このような予期しなかった構造変化をN末端側を除いた変異体の構造を同じくナノディスクに入れた単粒子解析法で解析することによって確認できた。イオンチャネルについては、Na+チャネルの構造解析に成功することに加えて、バクテリア由来の初めてのCa2+チャネルを同定することができたので、計画以上の興味深い成果を得ることができた。これによって、Na+とCa2+イオンの選択性の機構の研究を進展させられる可能性ができた。胃では100万倍のプロトンの濃度勾配を実現できるHK-ATPaseが機能しているが、高い分解能で構造解析を行うことによって、このポンプのポンピング機構を理解できるようになった。クローディン‐3の構造解析によって、3番目のへリックスの曲りが他のクローディンとは異なることを見出し解析した。この曲がる部分のプロリンが重要であり、他の27種類のクローディンのこの部分は、P,A,Gの3種類のアミノ酸だけが発現しており、へリックスの曲り方を決めている。この位置での曲りがタイト結合のストランドの性質を決める重要な因子であるという、予想外に興味深い成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である2019年度も計画通りに、6種類のチャネルに関する研究課題の研究を総合的に進める。特に、近年発展が目覚ましい、クライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法による研究をさらに強力に進める。ギャップ結合については、イネキシンのみならず、コネキシンの構造もナノディスク法を用いて解析する。アセチルコリン受容体の解析は試料作製で苦労しているが何とか成果を出したい。水チャネルは、脳に多くの発現がみられるAQP4とその阻害剤との複合体の構造に基づいて、阻害剤開発を行うとともに、このAQP4が関わる自己免疫疾患の研究も行う。バクテリア由来のCa2+チャネルを同定したので、イオン選択性の機構の解明も進めたい。胃のプロトンポンプHK-ATPaseについては、さらに研究を進めて高分解能の構造解析と機能解析を行うことで、ポンピング機構を解明する。タイト結合チャネルのカギとなるクローディンについては、これまでにクローディン-15,-19, -3の構造を解析したが、クローディン-6をはじめ、他のクローディンの構造解析も行う予定である。以上のように、当初掲げた研究課題を超える成果を出すために、最終年度の研究を行う。
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Research Products
(17 results)