2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物病原菌の感染戦略における宿主認識と形態形成の分子基盤
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15H05780
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
久保 康之 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 教授 (80183797)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高野 義孝 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80293918)
西内 巧 金沢大学, 学際科学実験センター, 准教授 (20334790)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 炭疽病菌 / 感染機構 / 形態形成 / 病原性 / シグナル伝達 / 転写制御 / エフェクター / 膜交通因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウリ類炭疽病菌において植物特異的シグナル受容を介した付着器形成に関与する遺伝子の一つとして、出芽酵母の細胞極性成長などに関与するMOR[morphogenesis-related NDR (nuclear Dbf2-related) kinase network]シグナル伝達経路が植物表層のクチンモノマーであるオクタデカナールを介した付着器分化に関与することをリン酸化酵素活性評価、マイクロアレイ解析により明らかにした。 また、物理的シグナル受容系因子の探索は、pag1変異をバックグラウンドとする二重変異株スクリーニング実験の順遺伝学的解析によりにより、目的とする変異形質をもつ変異株の作出に成功した。さらに、脱リン酸化酵素複合体制御因子WHI2が炭疽病菌感染初期段階における活物寄生性の確立においてTOR(Target of Rapamycin)シグナル経路を介した環境受容に関与し、その結果、病原性に強く関わっていることを明らかにした。 一方、インターフェイスへのエフェクター分泌に関しては、出芽酵母においてエキソサイトーシスを制御している低分子量Gタンパク質遺伝子RHO1, RHO3, およびCDC42のオルソログ遺伝子について解析をすすめた。RHO1については標的破壊株が得られず本遺伝子の破壊が致死になる可能性が示唆されたが、RHO3, CDC42については得られた破壊株の解析より両遺伝子がエフェクター分泌に関わることを示唆する結果が得られた。また、エフェクター遺伝子の転写制御領域の研究に用いるレポーターコンストラクトの導入部位の位置効果問題を解消するため、ウリ類炭疽病菌で機能するILV遺伝子部位導入系の構築をおこない、その確立に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウリ類炭疽病菌のNDRキナーゼCbk1の活性制御に与る6種の制御因子のノックアウト株の作出を試み、hym1遺伝子破壊株の作出と機能評価を行った。他の遺伝子は生存に必須の遺伝子であった。また、NDRキナーゼの免疫学的活性評価実験とマイクロアレイ解析を進めた。これらは2年次から進める予定であったが、前倒しで達成できたと評価している。一方、オクタデカナールの受容体探索については、順遺伝学的手法にて変異遺伝子の同定作業を進めており、計画通りである。さらに、病原菌の活物寄生性確立に重要な働きをしている遺伝子WHI2の機能評価研究を行い、論文発表をすることができたことは評価したい。また、これらの研究の基盤となる細胞周期制御と病原性の関する研究に関しても論文発表することができた。 一方、インターフェイスへのエフェクター分泌に関しては、低分子量Gタンパク質遺伝子RHO1, RHO3, CDC42遺伝子について解析をすすめ、その結果、RHO3およびCDC42遺伝子がウリ類炭疽病菌のエフェクター分泌に関わることを見出した。さらにエフェクター遺伝子の発現制御領域の研究に必要なILV遺伝子部位導入系の確立も完了し、当該研究を十分に推進していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
実験計画は全般に順調に進んでおり、幾つかの実験は前倒しで実施することができた。現在、作業的に実施できていない研究はオクタデカナールのタグ化による受容体探索実験である。これは他の研究計画が先行的に進んだため、次年度に実施した方が適切と判断したためである。本年度は本実験に着手し、遺伝学的手法と生化学的手法の二つのアプローチを進め、研究目的の達成をはかっていきたい。 また、エフェクター分泌に関しても、研究は非常にスムーズに進展しており、今後も引き続き進捗状況に対する検証を随時おこないながら、本研究を迅速に推進していきたい。本年度は、まず明らかにしたエフェクター分泌関連因子について詳細な機能解析を実施するとともに、エフェクター遺伝子の発現制御領域およびその生物学的意義についても研究をすすめていく方針である。
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Research Products
(23 results)