2018 Fiscal Year Annual Research Report
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15H05783
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
関水 和久 帝京大学, 医真菌研究センター, 教授 (90126095)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣内 力 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 准教授 (60420238)
松本 靖彦 帝京大学, 医真菌研究センター, 講師 (60508141)
浜本 洋 帝京大学, 医真菌研究センター, 准教授 (90361609)
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Project Period (FY) |
2015-05-29 – 2020-03-31
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Keywords | 感染症 / 微生物 / 薬学 / カイコ / 発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.新規病原性遺伝子の機能解析:昨年度までに同定した14の新規病原性遺伝子のうち、文献調査の結果病原性への寄与が明らかになっていた遺伝子、及び、再現性が低かった株を除き11の遺伝子破壊株が再現よくカイコでの病原性が低下していた。さらにマウス全身感染モデルにおけるそれらの遺伝子破壊株の臓器における生菌数を測定したところ、9つの遺伝子破壊株が野生型株に比べ統計学的に有意に低下していた。それらの株のうち1株が溶血毒素の発現の低下が認められ、別の一株がプロテアーゼの発現低下が認められたが、それ以外については野生型と差がなく別の要因によると考えられた。さらに本研究カイコ感染モデルを用いて以前に見いだしていた病原性遺伝子SA0873の機能解析を行い、その酵素活性を明らかにし、活性のアッセイ系を確立した。 2.真菌の病原性遺伝子の探索と同定:マウス全身感染モデルにおける真菌の発現解析の結果から、発現量が多い遺伝子の順からカイコモデルを用いた病原性の検証を行った。その結果、42遺伝子破壊株について検討した結果、16遺伝子について病原性の低下が認められた。 3.病原性遺伝子の機能解析と阻害剤の探索:酵素活性測定系を確立した新規病原性因子について、阻害活性を指標とした化合物の探索のパイロット試験を実施した。 4.病原性遺伝子ネットワークの解明:鉄獲得系のfhu系は時間経過によらず常に発現していたが、その他の3つのsir系を含む鉄獲得系は時間経過と共に発現量が増加していた。一方で、鉄欠乏時に発現量が減少するリプレッサーであるfurは時間経過と共に発現量の減少が認められた。fhu遺伝子やsir遺伝子のプロモーターにはfur boxが存在するが、両者で異なる挙動を示すことからin vivoにおいてはFurとは異なる制御因子が働いていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宿主環境下における細菌及び真菌の網羅的な遺伝子発現解析手法は当初の見込み通り確立でき、さらに当初予定していない菌種に対する手法も確立できた。また、プロモーター領域の解析については、宿主環境下における発現変動が当初の予想よりも複雑で既存の知見が当てはまらない例が多いことがわかってきた。今後の解析により新しい知見が得られることが期待できるが、本研究計画においては当初の予想以上に難航している状況である。一方、本研究において細菌及び真菌について当初の想定以上の新規病原性遺伝子を多数見いだすことに成功できた。なお、本研究のように真菌について多数の病原性発揮に必要な因子を同定した例はなく、本成果は他の追随を許さない位置にいると考えられる。阻害薬のスクリーニングを行うためのアッセイ系についても複数確立でき、さらに今後も複数の因子について確立を見込むことができる。さらに、病原性因子を標的とする阻害薬探索のパイロット試験を実施できた。試験の結果を元に改善するべき点が見いだされたことから、大規模スクリーニングに至っていないが、検出系の改良により改善を見込むことが可能である。以上のことから、一部計画通りには進行してないものの、当初の研究計画で掲げたコンセプトの大半は確立したか確立しつつあり、全体としては概ね順調に進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)病原性発揮機構の解析:真菌のカイコモデルで同定された病原性遺伝子について、マウスモデルでの評価を実施する。同定されている遺伝子数が多いため種間での宿主環境下での発現量、種間での共通性などを勘案し絞り込んだ上で実施する。また、すでに同定された黄色ブドウ球菌の新規病原性遺伝子については機能解析を引き続き実施し、アッセイ法の確立を行う。 (2)病原性を抑制する阻害薬の探索:見いだされた新規病原性遺伝子のうち病原性への寄与が最も高くアッセイ系が確立しパイロット試験を実施したものについて、パイロット試験で見いだされた問題を解決し化合物のスクリーニングを実施する。 (3)病原性遺伝子ネットワークの解明:当初計画の網羅的な解析ではなく、新たなシグナル伝達経路の解析に絞り込む。具体的には、本研究において病原性遺伝子の探索によって見いだされた新規病原性遺伝子に着目する。本遺伝子破壊株では、溶血毒素やプロテアーゼなど複数の病原性因子の発現量が変わっており、また遺伝子発現段階での制御の可能性が見いだされていることから、遺伝子破壊株のRNA-Seq解析、Chip-Seq解析等を行い、発現制御機構を明らかにする。
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Research Products
(26 results)