2015 Fiscal Year Annual Research Report
カントにおけるパトリオティズムとリパブリカニズム:18世紀思想史の一断面
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15H05980
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
齋藤 拓也 北海道大学, 大学院メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (70759779)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | パトリオティズム / カント / 共和主義 / 政治的徳 / 18世紀思想史 / 民主主義 / 主権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度はカントの道徳哲学および政治思想におけるパトリオティズム概念の位置づけを解明するために、カントの用いているドイツ語の表現「祖国的(patriotisch)」と「思考様式(Denkungsart)」に即して、「祖国(patria=Vaterland)」と「思考様式」のそれぞれについて、カントの1780 年代以降のテクストを中心に分析を行い、次の成果を得られた。 (1)「祖国」概念の多面性 カントの「祖国」概念の内実を掘り下げて検討した結果、歴史や伝統ではなく権利の保障に国家を祖国として評価する基準が置かれていることが明らかになった。カントは専制を批判する文脈で「祖国」を「共和国」と同一視している。「共和国」とは何よりも人間の権利を法によって保障する政治制度であり、これが実現されている状態が「公共の福祉(公共善)」と呼ばれる。以上の内容を論文として纏めて『社会思想史研究』に投稿し、第5回社会思想史学会研究奨励賞を受賞した。 (2)パターナリズム的統治批判 さらに専制は政治制度の観点からだけではなく、被治者を「未成年状態」に置くという啓蒙の問題としても論じられていることに注目して、統治批判と啓蒙論との関係を考察した。カントは道徳哲学に関する著作で、意志決定において感性の影響を優先してそのまま承認する態度を厳しく批判している。「思考様式」は感性の影響に対して理性理念を優先して行為の指針(格率)を決定する点を強調するために用いられる概念である。本研究ではカントが専制批判の文脈で公的な意志決定における格率の吟味の重要性を論じていることを解明し、格率を吟味する過程が公開されることで、被治者の「未成年状態」が回避されうることを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
専制批判の文脈で展開されるカントの共和制国家の構想を再構成し、雑誌論文の形で研究成果として公表することができた。思考様式と政治的意志決定の関係についても雑誌論文を準備している。ただし、カントの道徳哲学における「思考様式」の位置づけについては扱うべき文献が多いため、成果を纏めるためにはさらに時間が必要だと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にしたがって、次年度は、当時のドイツ語圏の思想家たちの政治的イデオロギーの観点からパトリオティズムの諸類型を析出し、これらの類型と比較することによって、カントの「パトリオティズム」概念を再構成し、その特徴を明らかにする予定である。
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Research Products
(3 results)