2015 Fiscal Year Annual Research Report
配位子-配向基相互作用を利用したコバルト触媒による不斉C(sp3)-H結合活性化
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15H05993
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
吉野 達彦 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (50756179)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 炭素-水素結合活性化 / コバルト触媒 / アリル化 / アルケニル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
遷移金属触媒によるC(sp3)-H官能基化は現在の有機合成において重要な課題であり、特に安価な第一列遷移金属を触媒として用いることは未だ困難な課題である。この解決に向け、配位子・配向基相互作用を可能とするコバルト触媒の合成を検討した。まずは官能基として、水酸基を有するシクロペンタジエニル(以下Cpと呼ぶ)配位子の合成、およびコバルトとの錯形成を検討した結果、ヒドロキシメチル基を導入したCp配位子は不安定であり、錯体合成条件および反応条件で分解するため不適切であることがわかった。そこでリンカー部を一炭素伸長したヒドロキシエチル基を持つCp配位子を検討したところ、安定なコバルト触媒が得られた。この触媒を用いて、トリフルオロメチルケトン部位を有する配向基を導入した基質のC-H官能基化反応を検討したが、基質の不安定性が問題となり、目的とする反応は進行しなかった。目的とする反応の進行を確認するには至っていないものの、これまでほとんど合成報告例のなかった、極性官能基を有するCpコバルト触媒の合成法を確立したことで、今後様々な触媒の設計・合成が可能になったと考えられる。 また同時に反応形式の一般性を拡張すべく、コバルト触媒を用いた種々の反応開発もおこない、アリルアルコールをアリル化剤とする芳香族C-Hアリル化反応や、ヘテロ環のC-Hアルケニル化反応の一般性拡張に成功した。高原子価コバルト触媒によるC-H官能基化は未開拓な部分の多い新しい分野であり、これらから得られた知見は今後C(sp3)-H官能基化反応へと展開していく上で重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
極性官能基を有する錯体の合成法の確立やその安定性等の多くの知見を得ることができ、またC(sp2)-H官能基化において、反応形式の拡張にも成功しており、十分な進展があったと考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き配位子と配向基の探索を続ける。基質の安定性を考慮し、配位子にカルボン酸部位を導入し、それと水素結合を形成できるような配向基の設計と合成、反応条件検討をおこなう予定である。また反応の不斉化という点では、当初の計画に加え、キラル対アニオンを利用した反応の不斉化も検討していく予定である。
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Research Products
(3 results)