2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15H06012
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
藤岡 悠一郎 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10756159)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 複合生業 / 気候変動 / 半乾燥地域 / モパネ / アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアやアフリカの農村社会では、農耕や牧畜、漁労、狩猟採集、賃労働など、多様な生業を人々が複合的に実践することで生計や社会を維持する“複合生業システム”が発達してきた。グローバルな気候変動のなかで降雨パターンが変化し、農村をとりまく社会経済環境が急速に移り変わる中で、複合生業システムもまた変容を遂げつつある。他方、複合生業には人口が増加し土地が減少する中での持続的資源利用という観点や気象災害に対する脆弱性緩和機能などの点から新たな役割が期待されている。本研究では、モパネ植生帯に立地する3地域を対象地域とし、半乾燥地域で発達してきた農耕と牧畜を中心とする複合生業システムの変容の過程、および現代社会の中で複合生業がもつ意味を検討し、現代の複合生業論を再構築することを目的とする。平成27年度は、南部アフリカの半乾燥地域に設定した3つの事例地域(ナミビア、ボツワナ、南アフリカ)において、衛星画像や地図などの資料収集、既存のデータ整理および現地調査を実施した。資料については、調査対象地とする3地域において、地形図や衛星画像などの資料を収集し、地理情報システム(GIS)を用いて地理情報を整理した。南アフリカにおいては、北東部のファラボルワ地域において現地調査を実施し、モパネ植生帯における植生環境に関する調査、生業に関するインタビュー調査を実施した。ナミビア、ボツワナにおいては、雨量データや人口分布に関するデータを取得し、経年的な地域の変化を整理した。また、これまでにナミビアで取得したデータを整理し、本研究のテーマである複合生業という観点から過去10年間の生業変容に関する情報を整理した。また、ボツワナにおいては、現地のカウンターパートと連絡をとり、平成28年度の調査内容などを決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の研究実施計画では、(1)衛星画像、GISを活用した土地利用解析、(2)インタビューによる社会調査、(3)参与観察による生業調査、(4)土壌や植生などに関する自然環境調査を計画していた。(1)については、調査対象地域とする南部アフリカの3か国(ナミビア、ボツワナ、南アフリカ)において衛星画像や地図情報などを取得し、土地利用の概要を整理した。(2),(3),(4)については、南アフリカにおいて現地調査を実施し、データを取得した。また、ナミビアにおいて、(2),(4)に関する既存のデータを整理した。ボツワナにおいては、エルニーニョの発生に伴う大規模な干ばつが発生し、降雨が大幅にずれ込むこととなった。そのため、当初予定していた現地調査を平成28年度にずれ込むこととなったが、現地のカウンターパートと情報を共有し、調査内容などに関する協議を実施した。以上の進捗状況から、研究は概ね進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度に引き続き、平成28年度も南部アフリカの半乾燥地域において現地調査を実施する。本研究では、農耕と牧畜を組み合わせた半農半牧に着目する。調査とりわけ下記の内容に絞って実施する。 (1)土地利用解析:撮影年次の異なる衛星画像、航空写真を基に、GISを活用し、調査地域におけるここ数十年間の土地利用パターンの変化を解析する。(2)降水量経年変化:近隣の気象局データを基に雨量の変化パターンを解析する。また、雨量が極端に少ない年、多い年を対象に、それらの都市の対応方法を聞取りから把握する。(3)社会経済調査:半構造的な聞取り調査により、現地の生業、社会組織、経済活動、食糧獲得手段、気象災害時の対応などについて把握する。(4)食事調査:調査世帯が日々消費する食料の内訳や調査方法を明らかにするため、食事ニア用のノートへの記録をインフォーマントに依頼し、通年にわたるデータを取得する。(5)参与観察による生業活動調査:村に滞在し、家畜頭数、GPS受信機を用いた放牧ルートの把握、農作業の過程、作物種の作付け様式などを参与観察によって調査し、特に農家が実践する主体的な創意工夫について把握する。(6)自然環境調査:生業に関連する自然環境について、土壌調査、植生調査、地形測量などによって把握する。 また、国内の学会において研究内容を発表し、内容に関する議論を行う。また、研究の内容をまとめ、論文の執筆をすすめる。
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Research Products
(4 results)