2015 Fiscal Year Annual Research Report
輻射流体数値シミュレーションで解き明かす初代銀河形成過程
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15H06022
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
矢島 秀伸 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (10756357)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 銀河形態 / サブミリ銀河 / 宇宙論的流体計算 / 巨大ブラックホール / 星団形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
初代銀河の環境依存性とその光学的特性について調べた。赤方偏移6において、10の12乗太陽質量のハローを形成する領域を宇宙論的流体計算によりシミュレートし、銀河の形態進化を解析した。結果として、高密度領域では、星からのフィードバックがあるものの、周りから銀河への非常に高いガス降着率のため、長時間安定した銀河ガス円盤が形成されることがわかった。また、多波長輻射輸送計算を実行し、星からの紫外線のほとんどは星間ダストに吸収され、大質量銀河は赤外線で明るく輝くことを示した(Yajima. et al. 2015, MNRAS, 451, 418)。このような銀河は、近年アルマ望遠鏡で発見されている初期宇宙のサブミリ銀河に対応している可能性を示唆した。また、初代銀河の進化を理解する上で重要なピースの一つである巨大ブラックホールの形成について、半解析的手法を用いて調べた。そこでは、初代銀河同士が合体した場合、銀河中心に大量のガスが流れ、高密度な星団が形成される過程をモデル化した。結果として、10の8乗太陽質量の初代銀河同士が合体した場合、形成される星団はコアコラプス過程により潰れ、中心で1000太陽質量程度のブラックホールが作られることがわかった。そして、星団内の星がブラックホールに降着することで、ブラックホールは10万太陽質量程度まで成長することを示した。その後、このモデルをHalo merger treeと組み合わせることで、ブラックホールの質量関数を求めた。それにより、我々の星団モデルによって作られるブラックホールが、赤方偏移6-7で発見されている超大質量ブラックホールの種になっている可能性を示唆した(Yajima et al. 2016, MNRAS, 457, 2423)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで、初代銀河の形成・進化にとって重要な環境効果、ブラックホールとの共進化などを調べた。しかし、空間分解能は数十パーセクと十分とは言えなかった。そこで、現在は空間分解能を数パーセクまで上げ、初代銀河内でのクランピーな星間ガスの構造、分子雲形成を分解したうえで星形成史を計算している。それにより、平均的な密度領域で形成される初代銀河は、局所的な星形成とフィードバックによってガスのアウトフローが引き起こされ、星形成が急激に止まることがわかりつつある。また、銀河円盤などの大きい構造は長時間維持されないことがわかってきた。これらの激しく変動する星形成と銀河円盤の破壊がどのような条件で起きるのかを、さまざまな初期条件に対してシミュレーションを行うことで環境依存性を調べている。 星からのフィードバックに関しては、ライマンアルファ光子による圧力などは取り入れられていない。現在、ライマンアルファ光子の多重散乱を伴う輸送効果と、流体ダイナミクスを融合した新しい計算コードを開発している。
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Strategy for Future Research Activity |
初代銀河の形成・進化を解明するために重要なポイントは、(1)星間ガスの構造を詳細に分解し、どこでどのように星形成が起きるかを理解すること、(2)星からの輻射や超新星爆発の影響を正確に取り入れることである。(1)に関しては、ズームインという初期条件を作る手法と、大規模な並列計算を組み合わせることで達成できる見込みである。(2)に関しては、超新星爆発の影響を精度よく見積もる手法がすでに使用している計算コードGizmoに組み込まれている。また、電離加熱やダストへの輻射圧も取り入れられているので、残る重要なピースはライマンアルファ輻射圧である。ライマンアルファ光子の輸送は多重散乱を伴うために、一般に計算量が膨大になる。そこで、まずは1次元球対称モデルによってライマンアルファ輻射圧を取り入れた流体ダイナミクスの性質を調べる。その後、精度をなるべく落とさずに計算量を減らす手法を開発し、3次元の流体計算へと組み込む予定である。これらにより、(1)、(2)の困難を克服し、初代銀河の形成と進化過程をあきらかにする。また、同時に初代銀河の観測輻射特性を計算することで、アルマ望遠鏡やすばる望遠鏡の最新データと直接比較し、理論モデルを検証していく。
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Research Products
(5 results)