2015 Fiscal Year Annual Research Report
長期信頼性支配因子の解明による革新的タングステン材料の創製
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15H06030
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
福田 誠 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70757666)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 核融合炉 / プラズマ対向壁 / タングステン / タングステン合金 / 再結晶脆化 / 照射脆化 |
Outline of Annual Research Achievements |
核融合炉プラズマ対向壁材料として期待されるタングステン(W)には、長期間の熱負荷や中性子の照射による脆化への耐性向上が求められている。本研究では、実機環境における長期信頼性支配因子及び特性変化メカニズムを明らかにし、核融合実証炉及び実用炉の運転環境に適応した信頼性の高い革新的なW材料を創製することを目的としている。核融合炉実機環境における長期信頼性支配因子として、熱負荷と粒子線照射が挙げられ、これまでに、両者による材料組織及び特性の変化挙動と、そのメカニズムを調査した。熱負荷に関しては、最大2300℃の温度で純W及びW合金を熱処理し、その後の組織変化及び引張特性の変化を調査した。その結果、純Wでは1100℃から結晶粒組織の粗大化が開始し、2300℃の熱処理後には1mm程度まで結晶粒が成長した。その一方、第二相の分散や、合金元素を添加したW合金においては、熱処理前の受け入れままの状態において純Wよりも微細な結晶粒組織が観察され、明確な結晶粒組織の粗大化が認められた温度は1800-2000℃であり、結晶粒組織の安定性が合金化によって大幅に向上することが明らかになった。また、結晶粒組織の安定性向上には、合金元素添加に比べ第二相の分散がより効果的であることが示唆された。1500及び2300℃で熱処理した試験片を用いて、室温から1300℃の温度範囲で引張強度を測定した結果、純Wでは、300-900℃の温度域において、熱処理による顕著な強度低下が認められた。W合金においても熱処理による強度低下が認められたものの、純Wに比べ強度低下が抑制される結果が得られた。加えて、1100℃において最大100時間の等温時効を実施し、長時間の結晶粒組織安定性を調査したところ、純Wでは時間の増加に伴う結晶粒の粗大化が認められたものの、W合金においては明確な結晶粒の粗大化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は純W及びW合金の熱負荷環境における特性変化挙動の調査と及び合金化の影響評価のため、当時時効及び等温時効実験等を実施した。また、照射環境における特性変化挙動の調査及び合金化の影響評価に向け、高温照射用ステージの設計、作製を行った。熱負荷環境における特性変化及び合金化の影響評価に関しては、1時間の熱処理を最高2300℃において純W及びW合金に対して実施し、熱処理後の試験片を用いて金相観察及び引張試験を実施した。純Wでは1100℃から結晶粒組織の粗大化が開始し、2300℃の熱処理後には1mm程度まで結晶粒が成長した。その一方、第二相の分散や、合金元素を添加したW合金において明確な結晶集組織の粗大化が認められたのは1800-2000℃であり、結晶粒組織の安定性が合金化によって大幅に向上することが明らかになった。また、結晶粒組織の安定性向上には、合金元素添加に比べ第二相の分散がより効果的であることが示唆された。1500及び2300℃で熱処理後に引張強度を測定したところ、W合金は、純Wに比べ高い強度を示し、高温環境における強度低下が抑制される結果が得られ、特に合金元素添加と第二相分散を同時に施した場合に最も高い効果が得られることが明らかになった。等温時効実験による材料組織の長期安定性評価に関しても、1100℃で熱処理した場合純Wでは時間の増加に伴う粒成長が認められたものの、W合金においては明確な粒成長は認められなかった。従って、純Wにおいては、1100℃という比較的低い温度においても時間の増加に伴う脆化が起きる可能性が示唆された一方、合金化によりそれが抑制される可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、純W及びW合金の長期間の熱負荷による組織や機械特性の変化及び、それらに及ぼす合金化の影響を、等温時効実験により評価する。また、高温照射ステージを用いた、実機相当の温度域における粒子線照射実験を実施し、組織や機械特性の変化と、それらに及ぼす合金化の影響を調査する。その後、本研究で得られたW材料の再結晶脆化挙動及び、照射脆化挙動のデータを基に、再結晶脆化と照射脆化の重畳を考慮しつつ、実機環境におけるWの脆化挙動とそのメカニズムの検討を行う。また、そこで得られた知見を基に、現在評価を進めているW合金よりさらに特性の優れたW合金設計の指針を立て、材料を試作し評価を実施する。評価項目としては室温から1300℃における引張特性、熱拡散率等を検討しており、さらにこれらの物性値を用いて核融合炉実機のモノブロックダイバータを対象とした構造解析を実施し、実機の熱負荷環境における有効性を評価する。
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Research Products
(3 results)