2015 Fiscal Year Annual Research Report
細胞内ATP及び還元環境応答性siRNAデリバリーキャリアの創製
Project/Area Number |
15H06108
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
内藤 瑞 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (50755329)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | siRNA / 高分子ミセル / ATP応答性 / 還元環境応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
二本鎖RNAのsiRNAは次世代の治療用薬剤として期待されており、細胞質内では非常に選択性良く標的とするmRNAを分解し、標的遺伝子の発現抑制を誘起することができる。難治性疾患を惹起する遺伝子発現を抑制することで遺伝子発現を抑えることが可能となれば治療効果を得ることができる。一方で、siRNAを薬剤としてそのまま生体に投与した場合、siRNAは投与後すぐに、血流中に存在する酵素による分解や、臓器による代謝をを受けてしまい、血流中から速やかに消失してしまい、薬理活性を失ってしまう。そこで、生体内、特に血流中ではsiRNAを安定に保護し、細胞質内へと効率的に送達することのできる"デリバリーキャリア"の開発がsiRNAの医療応用には必要不可欠である。デリバリーキャリアには、血流中で安定的にsiRNAを分解・代謝から保護する機能とともに、細胞質内では一転して、細胞質内環境に自律的に応答して保護していたsiRNAを放出する機能を持った、細胞質内環境応答性高分子ミセルの開発が求められている。これまでに既に、細胞質内の還元環境や、ATP濃度に応答してsiRNAを放出する高分子ミセルの調製に成功しており、本研究では、従来の高分子ミセル技術を統合し、細胞質内ATP濃度及び還元環境に対して同時に応答する高分子ミセルを調製し、細胞質内外により鋭敏に応答する高分子ミセルの開発を行う。また、機能評価を細胞・モデル動物を用いて評価し、有用性を確かめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
目標の達成に向け、H27年度では高分子の合成及び高分子ミセル調整を行った。高分子ミセルの外層になるポリエチレングリコールを開始剤として、ポリアミノ酸を重合した。更に、ポリアミノ酸側鎖へとATP応答性基や還元環境応答性基を様々な導入率で導入した。 予定していた、高分子の合成と、高分子ミセルんの調製は終了し、環境応答性の評価も行った。高分子とsiRNAとの混合では分散度の低い高分子ミセルの調製に成功し、環境応答性も確認したところ、細胞質内に応答してsiRNAを放出しうることが示唆される実験結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に調製した高分子ミセルを更に詳細に検討し、細胞や動物に対して投与し、評価を行う。 本研究では、siRNA内包高分子ミセルの生体外(血流中)での安定性向上も重要な検討課題の1つであり、調製した高分子ミセルの安定性の評価を行い、安定性の高い高分子ミセルの選定を行う。特に、負電荷を持ったポリアニオンやアニオン性脂質などに対する安定性評価を行う。また、培養細胞に対して高分子ミセルを接触させ、細胞内への取込量、細胞毒性、及び、標的配列の遺伝子発現抑制量の評価などを行う。上記と並行し、高分子ミセルを動物へ投与し、血流中での安定性や、皮下腫瘍モデルに対する集積性、更には、治療用siRNAを用いた皮下腫瘍モデルの治療効果の検討を行う。
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