2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06117
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐久間 保彦 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (20755376)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ヒッタイト / 神託文書 / 鳥占い / 蛇占い |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、今までに公刊された楔形文字の筆写テキストすべてに目を通して、ヒッタイトの知られている限りすべての神託文書を収集した。次に、断片的な文書はそれ自体からはあまり多くの情報が得られないため、収集した神託文書どうしの接合を見つけてよりまとまったテキストを構築することを試みた。そのうえで、それぞれの神託で具体的にどのような技術を用いたかについて調べた。 そのうち、鳥占い文書については、博士論文作成後に公刊された文書もあったので、それら新しい文書の翻字・翻訳・注釈を作成した。さらに、それらの新しい文書も考慮したうえで、もう一度博士論文の内容を吟味し、必要な範囲で修正をおこなった。また、博士論文作成時には知らなかった統計解析方法を用いてより正確な解析をおこなうため、データを再構築した。 また、蛇占い文書については、すべての神託文書を通読する過程で、今まで蛇占いとは認識されていなかったいくつかの文書を蛇占い文書であると同定した。それらの新しく得られた文書も合わせて、すべての蛇占い文書の翻字・翻訳・注釈を作成した。また、蛇の動きの記述を、鳥の飛行の記述と比較し、両方に共通して使われている術語と蛇の動きにのみ使われている術語とに分け、それぞれの術語の意味を確定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
神託文書は断片的なものが多く、分析に耐えうるまとまった文脈を得るために、できる限り他の粘土板と接合するのが望ましいが、それなりの時間と労力を費やしたにもかかわらず、予想に反して接合がなかなか見つからなかった。また、鳥占い文書については、吉凶の解釈や鳥名の分類をおこなうにあたって、これまでの説明変数では不十分であり、新たな説明変数を考慮する必要があった。同時に、統計手法についても、自分が使い慣れていたものでは足りず、他の手法も使わなければいけなかったために、その習得に時間がかかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒッタイトの神託文書の研究では、鳥の飛行や蛇の動きの場合と同様に、他の技術についても、入手可能な全ての文書を対象とする。まず、中期ヒッタイト語と後期ヒッタイト語に分けた後、翻字をおこなう。次に、翻字をもとにして、専門用語の意味を確定し、それを手掛かりに、吉凶の解釈の基準を推測する。最後に、以上の結果を統合して文書の翻訳し、必要に応じて注釈を付ける。また、神への質問の種類にはどういうものがあるか、その時に卜占法のどの技術を使用するのか、複数種類の技術を使用する場合にはどのような順番かについても解析をおこなう。なお、文書の編纂には、申請者が博士論文として鳥占い文書を編纂した経験と技術を活用することができる。また、専門用語の意味の確定には、農学生命科学研究科で習得した動物観察法を、吉凶の解釈の基準の推測や、使用する技術の種類ならびにその順番の解析には、同じく農学生命科学研究科で習得した統計的手法を使用することができる。
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