2015 Fiscal Year Annual Research Report
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15H06118
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀川 康史 東京大学, 史料編纂所, 助教 (80760280)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 室町幕府 / 使節遵行 / 守護 / 有力国人層 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)室町幕府の下知執行手続きである「使節遵行」を事例に、室町幕府支配体制の変質過程について検討した。まず15世紀の使節遵行にかかわる史料の網羅的収集に取り組み、未刊行史料を含む約1200件のデータを得ることができた。考察の結果、15世紀なかばに入ると地域の諸領主層に対して、紛争当事者への「合力」(協力)を命じる使節遵行・軍勢催促の類型が登場することがわかり、室町幕府―守護の連携関係を軸に地域支配が行われる従来のあり方に転換があったことが明確となった。以上の成果は東京大学史料編纂所内の研究会で口頭報告を行い、現在論文化を進めている。
2)南北朝期室町幕府の地域支配のなかで、「有力国人層」が一定の役割を果たした点については、拙稿「南北朝期室町幕府の地域支配と有力国人層」(『史学雑誌』123編10号、2014年)で論じたことがあるが、それをうけて2015年度は、出雲国(現在の島根県)の有力国人である朝山氏を事例に、有力国人層の存在形態および彼らが室町幕府の地域支配のなかで果たした役割について個別的・具体的検討を行った。その成果は、「中世後期における出雲朝山氏の動向とその役割―室町幕府の地域支配との関連を中心に―」と題する論文にまとめ、『日本歴史』に掲載されることが決定している。
3)本研究課題に関連するものとして、石野弥栄著『中世河野氏権力の形成と展開』(戎光祥出版、2015年)の書評の依頼を受け、執筆した(『日本歴史』掲載予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
使節遵行に関する研究については、当初の見込みの通り史料収集をほぼ終え、質・量ともに十分なデータを蓄積することができた。分析・論文化も順調に進んでいる。また使節遵行に関する研究のみならず、南北朝期室町幕府の地域支配に関する研究も2015年度のうちに進めることができたため、研究は当初の計画以上に進展したと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、まず使節遵行に関する研究を論文にまとめる予定である。また、南北朝期室町幕府の支配体制については、2015年度の成果を踏まえて、分析対象の微調整を行いつつ、史料の収集および分析を進めていく予定である。またそれに加えて、古代・中世・近世の諸権力の支配体制と比較しつつ、室町幕府支配体制の歴史的位置を探る作業にも取り組んでいきたいと考えている。
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Research Products
(3 results)