2015 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀の神聖ローマ皇帝軍と貴族の社会的ネットワーク
Project/Area Number |
15H06119
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
斉藤 恵太 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (20759196)
|
Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
|
Keywords | 西洋史 / 近世ヨーロッパ史 / 軍隊と社会 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀の神聖ローマ帝国における君主権力と貴族の関係を、軍隊という視角から捉え直すことを目的としている。本年度は、当初の計画通り「I 常備軍の創設」と「II 貴族の社会的ネットワーク」という二つの論点を中心に研究を遂行した。 まず常備軍の創設という問題に関しては、研究遂行者が本研究以前から進めてきた研究と本研究課題を発展的に統合した。具体的には、バイエルン、オーストリア、フランスを主な対象として、常備軍の制度的な支えとなった軍務官制度の展開を比較史的に検討した。その結果、各領域における軍務官制度の発展の類似性と差異が浮き彫りになった。さらに軍務官制度を担った貴族が、領邦君主と皇帝の間で忠誠のせめぎ合いに置かれていたことが明らかになった。以上の成果は、史学会大会および早稲田大学高等研究院セミナーシリーズにおいて口頭で発表した。 また貴族の社会的ネットワークに関しては、基礎となる史料の調査・収集を中心に研究を進めた。具体的には、2016年2月にウィーンの国立文書館群とバイエルンの州立文書館で史料調査を行った。これらの文書館には、ヴァレンシュタインの皇帝軍に傭兵隊長として務めたイタリア貴族マティアス・ガラスとオッターヴィオ・ピッコロミニらに関する書簡がある。それらの史料の調査・分析を通じて、イタリア貴族が婚姻関係などを通じて皇帝軍で張り巡らせた社会的ネットワークのありようについて概観を得ることができた。この成果に基づいて、来年度はイタリアの文書館に足を延ばし、貴族のネットワークの機能についてさらなる成果を挙げることが期待できる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように本年度の研究は、対象とするテーマ(「常備軍の創設」と「貴族の社会的ネットワーク」)の面でもスケジュールの面でも概ね計画に沿って遂行することができた。また、次年度に研究をさらに展開させるための史料的基盤を得られたことも、本研究の進捗状況を評価するうえで大きな意味を持つといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、当初の計画に沿って研究を遂行する。年度前半に文献による調査を進めたうえで、夏季にはトレントとトスカーナで傭兵隊長ガラスとピッコロミニの広域的なネットワークの機能を分析するための史料を調査・収集する。年度後半は研究の総括に向けて口頭発表や論文による成果のアウトプットを進める。また必要に応じて、イタリアかオーストリアないしドイツで史料の追加調査を実施する。
|
Research Products
(3 results)