2015 Fiscal Year Annual Research Report
農村地域における高齢者の社会的孤立の実態調査を通じた地域おこしの評価に関する研究
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15H06122
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 尚悟 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (20755798)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 地域おこし / 高齢者 / 孤立 / 孤独 / 農山村 / 過疎化 / 地域活性化 / 秋田 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は①高齢者の孤独と孤立に関する文献調査、②秋田県美郷町における高齢者を対象とした生活環境アンケート調査、③秋田県五城目町における地域おこしに関するフィールドワーク、の3つの調査に取り組んだ。はじめに①の文献調査より、農山村地域において社会的孤立の状況に至る要件と、主に心理学分野において活用されている孤独感尺度についての先行研究の整理を行った。社会的孤立に関する要件については、人口減・高齢化などによって徐々に地域住民間の交流の頻度や内容が変化する、空家や休耕地の増加などにより徐々に限界化する地域の雰囲気が生まれるなどが予測されたが、それらに関する具体的なつながりを示唆する先行事例はみられなかった。孤独感については、「UCLA孤独感尺度」を用いている先行研究が多く見られたが、一方でこの手法では20以上の質問が用いられ、高齢者を対象とした調査においては回答者への負担が大きいと判断された。そのため本研究のアンケート調査においては、UCLA孤独感尺度の短縮版を活用することが適当であると判断された。これらの文献調査を基に、秋田県美郷町において60歳以上の住民2,000人を対象として生活環境アンケート調査を実施した。1,167通の回答があり、58.4%と高い回収率となった。この結果については、同町の福祉保健計画に盛り込まれる予定である。また、秋田県内において地域おこしの活動が活発である五城目町においてフィールドワークを実施した。現行の地域おこしにおいては、体系的な評価手法はないものの、活動ごとの報告があり、これに沿って地域住民への聞き取り調査を行ってきた。これにより、現場の感覚から地域おこしにおいて重要と判断されている要件が複数出てきており、次年度はこれらについての検証を行っていく。このなかで、高齢者の社会的孤立や孤独に働きかけている要件を明らかにしていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、複数自治体における高齢者の社会的孤立に関するアンケート、聞き取り、生活圏マッピング調査を予定しているが、個人情報を含む内容が多くあり、かつセンシティブなテーマであるために、調査依頼に当初の想定よりも時間と労力がかかっている。特に調査内容についての説明と実施体系に関する調整に際しては、複数回にわたって自治体を訪問して説明をする必要がある。現在のところまでで、1自治体においてアンケート調査が完了しており、次年度に聞き取りと生活圏マッピング調査を実施する。この他に2つの自治体に調査依頼を打診し、説明を終えている段階である。こちらについては次年度においてすべての現地調査の実施を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究進捗は当初の予定に対し遅れが出ているため、必要な場合には当初計画よりも調査規模を縮小し、より地域おこしの要素に焦点を当てて進めていくこととする。アンケート調査の実施については、複数自治体において完了することを目指し、調査対象地域の60歳以上の人口における孤独感に関する第一段階までの分析を完了することを課題終了時までの目標にそれまでの現地調査を確実に実施する。社会的孤立・孤独な状態にあるインフォーマントへのより細かな聞き取りについては、個人情報の管理とセンシティブな項目について十分に留意した範囲で行っていく。
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