2015 Fiscal Year Annual Research Report
自由意志信念の構造と機能を説明する実証的モデルの確立
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15H06124
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡辺 匠 北海道教育大学, その他部局等, 講師 (80759514)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 自由意志信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、次の2つであった。第1に、本研究は「人々の自由意志概念が何から構成されているか」を明らかにすることを目的とした。第2に、本研究は「人々の自由意志に対する信念がわれわれの社会生活でどのような機能を果たしているか」を検証することを目的としていた。平成27年度は第1の目的について、文献研究の成果にもとづき、「人々の自由意志概念は他行為可能性(複数の行為が可能であること)と行為者性(自分の心理状態が行為を引き起こすこと)から構成されている」と仮説を立て調査をおこなった。参加者の自由記述データをコーディングした結果、事前に予測していた他行為可能性や行為者性の要素だけでなく、制約からの自由(内的要因もしくは外的要因に拘束されずに行為すること)の要素にふれた回答が多くみられた。これらの結果をふまえると、人々の自由意志概念は主として他行為可能性や行為者性、制約からの自由という3つの下位概念から構成されると考えられる。以上の知見にもとづき、自由意志に対する人々の信念を測定するための質問紙尺度の開発をおこなった。そこでは、他行為可能性や行為者性、制約からの自由という自由意志の各下位概念だけでなく、自由意志と関連する変数も取り入れたうえで調査研究を実施している。これらの調査研究では、「自由意志は他行為可能性や行為者性、制約からの自由から構成される」というモデルの妥当性が示され、またさらに自由意志に対する人々の信念は強いことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自由意志信念の構成概念の検討については、当初予定していた他行為可能性や行為者性の要素だけでなく、制約からの自由という要素が抽出されている。このように、仮説とは若干異なるものの、大枠では当初予想されていた結果が得られており、さらにその結果にもとづいて自由意志信念の測定尺度の開発が進んでいる。よって、全体として本研究は順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでに作成した自由意志信念の測定尺度について、一般化の検討をおこなう予定である。それにくわえて、自由意志信念がもたらす自己コントロールや責任帰属の機能を実証的に分析したうえで、それら一連のプロセスのモデル化を目指している。
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Research Products
(5 results)