2015 Fiscal Year Annual Research Report
代数的構造による離散力学系の可積分性判定手法の構築
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15H06128
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
神吉 雅崇 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 特任助教 (20755897)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 離散可積分系 / 代数的エントロピー / 特異点閉じ込め |
Outline of Annual Research Achievements |
離散力学系の可積分性判定基準について、共通因子の出現頻度と出現の際の指数を定式化することで精密化を行った。方程式の一般項を、複素数体上の初期変数の有理函数であると考え、出現する因子を調査した。先年度、時弘氏(東京大)・間田氏(日本大)と共同で行った、離散KdV方程式の特定の境界条件についての研究により、「ごく近い項同士を除いて、相異なる2項には共通因子が存在しないという性質が、可積分性と関係している」という事が判明しており、これを「co-prime条件」と呼んでいる。本年度の研究では離散KdV方程式に関連した離散可積分系およびそのreductionによって得られる式においてこのco-prime条件を厳密に定式化・証明を行った。非線形系においては、双線形形式への変換を行うことで、クラスター代数の結果によってローラン性(一般項が初期変数のローラン多項式である現象)および既約性が証明できる場合がある。このような手順を参考にして、対応する双線形形式が知られていない非線形系(Hietarinta-Viallet系およびその1パラメータ拡張系)について、高い次数のタウ関数形式を構成することで、互いに素条件の定式化とその証明を行い、結果を論文にまとめた。これらの研究をもとに、co-prime条件が離散力学系の可積分性判定基準として妥当であると判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた離散KdV方程式、離散戸田方程式の互いに素条件についての証明のみでなく、カオス的な解軌道を持つ離散力学系についての代数的エントロピーの導出を行うことができ、それらの結果を複数の学術論文に発表することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の研究成果をもとに、非アルキメデス的基礎体上の方程式の可積分性についての研究も行う。非アルキメデス的体(離散付値を持ち有限体を剰余体としてもつ局所体)における力学系についての研究は実数体上の系とは違い、ultra-metricを持つことにより、直感的な理解が難しく、また厳密な扱いにはrigid幾何学の知識を必要とすることもあり、十分に研究されてこなかった。本研究では代数的・幾何的な2方面からの研究を行うことでさらなる結果を得ることを目標とする。クラスター代数やLP代数との関係性の調査も今後の課題である。
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Research Products
(3 results)