2015 Fiscal Year Annual Research Report
高移動度ミクロン長π共役ポリマー半導体デバイス創成に向けた新規プロセス技術の開発
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15H06137
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫛田 知克 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特任研究員 (00759954)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 有機エレクトロニクス / 有機化学 / パイ共役 / 有機電界効果トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに報告されているニッケル触媒による熊田ー玉尾カップリング型重縮合反応を活用して、フラスコスケールにおいて高分子量のポリ-3-ヘキシルチオフェンを合成した。得られたポリマーの同定および分子量分布の決定は、核磁気共鳴分光法(NMR)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって行った。このとき、合成反応に用いるマグネシウム塩基の溶媒を文献に記載されているTHF溶液から、THF/トルエン混合溶媒の溶液とすることで、分子量は比較的小さいものの、重量平均分子量/数平均分子量比のより小さなポリマーが得られることが明らかとなった。合成したポリ-3-ヘキシルチオフェンを用いて、有機電界効果トランジスタを作製した。当研究室ですでに報告しているイオン液体上での圧縮配向法によりポリ-3-ヘキシルチオフェンの薄膜を作製し、偏光顕微鏡で観察することで結晶性のドメインがあることを確認した。これを、フッ素化されたアルキルシランの自己組織化単分子膜で表面処理したシリコン基板にのせ、アセトニトリルにつけ置きすることでイオン液体を洗い流したのち、コンタクト電極として金を真空蒸着することでトランジスタ素子を作製した。作製した素子は、良好なp型トランジスタ特性を示した。この結果は、パイ共役系ポリマーであるポリ-3-ヘキシルチオフェンが、本研究における高分子モチーフとして適当であることを示すものであると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パイ共役系ポリマーであるポリ-3-ヘキシルチオフェンを合成し、イオン液体上での圧縮配向法により結晶性のドメインのある薄膜の作製に成功した。これを用いた電界効果トランジスタを作製し、良好なp型トランジスタ特性を示すことを確認した。一方で、基板上での重合-製膜一体型プロセスの実現には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
二次元共役ポリマー薄膜形成に向けた検討に着手する.まず,パイ共役骨格に反応性官能基を導入したモノマー分子の合成を行う.その際,二次元的に重合反応を進行させるためプロセス時の薄膜形成に重要な役割をもつと考えられる種々のアルキル置換基をもつ誘導体を合成する.また,重合反応の官能基の数を減らしたモデル分子を用いて,重合反応のフラスコスケールでの検証実験も行う.ここで,プロセス適合性を鑑みて,反応条件の最適化を行う.また,得られた生成物については,反応後のパイ共役の拡張を確認するために,紫外可視吸収スペクトル測定や電気化学測定により,その電子構造について詳細な知見を得る. 先に検討した二次元ポリマー合成の反応条件を元にして,基板上ないしは気液界面での二次元共役ポリマー薄膜の形成を検討する.気液界面での二次元共役ポリマー薄膜の形成では,イオン液体表面での単分子膜形成とつづく加熱による重合反応を想定している.この際に,単分子膜形成におけるアルキル置換基の効果を検証する.また,加熱による重合反応については,動的かつ可逆的な化学反応を活用することで熱力学的に安定な化学構造をもった二次元ポリマーからなる均質な薄膜が形成されることが期待される.得られたポリマー薄膜については,X線回折や原子間力顕微鏡観察による構造解析ならびに光電子収量分光法等による電子構造解析を行うとともに,有機電界効果トランジスタ素子を作製しその性能評価を行うことで,π共役が二次元に拡張されていることを検証する.
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Research Products
(1 results)