2015 Fiscal Year Annual Research Report
Development of therapy for myotonic dystrophy by analyzing splicing mechanism using new splicing quantitative system
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15H06161
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 奈摘 東京大学, 生命科学ネットワーク, 特任助教 (10760069)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 筋強直性ジストロフィー / 選択的スプライシング / クロライドチャネル / MBNL / CELF |
Outline of Annual Research Achievements |
筋強直性ジストロフィーは、様々な遺伝子で選択的スプライシングが異常になることで発症することが知られている。特に、クロライドチャネルのスプライシング異常は、筋強直の原因であり、DMモデルマウスにおいてクロライドチャネルのスプライシングを正常にすると、筋強直の症状が改善することが分かっている。本研究では、ヒトのクロライドチャネルを正常化する最も効果的な治療法を探索することを目的とした。 当研究室の先行実験で、従来の方法でクロライドチャネルのスプライシングを定量すると、正常なスプイラシングアイソフォームの中に、異常なスプライシングアイソフォームも含まれて定量されていることが分かっており、正常なアイソフォームのみを増幅できるプライマーを設計して、qRT-PCRで定量する系を立ち上げた(スプライシングアッセイ)。これを用いて、ヒトのクロライドチャネルのミニジーンと、様々な部位をカバーするアンチセンスオリゴヌクレオチドをヒト培養細胞に遺伝子導入し、スプライシングアッセイを行ったところ、マウスとは異なる配列でよりスプライシングを正常化することが分かった。さらに、従来から分かっていた、正常なスプライシングを促進させるMBNLや逆に抑制するCELFを過剰発現させると、MBNL1ではクロライドチャネルのスプライシングが正常化し、CELFにおいては正常なスプライシングアイソフォームの減少傾向が見られた。また、MBNL1によるスプライシングの正常化は、正常なアイソフォームと従来の方法で正常だと定量されていた異常なアイソフォームの両方が増加していることに起因しており、これら2つのアイソフォームのスプライシング制御にMBNL1は関与していないことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在、ヒトのクロライドチャネルのミニジーンとアンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)の細胞への遺伝子導入の条件検討は終わった。その結果、exon 7Aの後半の方に設計したAONが最もスプライシングを正常化することが分かった。マウスでは、exon 7aの前半に設計したAONが最もスプライシングを正常化したことから、ヒトとマウスでは効果的なAON配列が異なることを検出できた。 次に、このスプライシングアッセイをAONだけでなく、スプライシング因子の効果を正確に測定するために利用した。すると、従来から正常なスプライシングを促進させることが知られているMBNL1を過剰発現させると、スプライシングの正常化が有意に促進し、MBNL2やMBNL3では正常化の促進は見られなかった。逆に、正常なスプライシングを抑制することが知られているCELF1を過剰発現させると、有意差はつかないが正常なスプライシングの抑制傾向が見られ、同様にCELF familyのCELF2~6についても抑制傾向が見られた。 ここまでの結果を論文に投稿したところ、このMBNL1によるスプライシングの正常化が、従来正常なスプライシングアイソフォームとして検量されていた異常なアイソフォームのスプライシング制御に関与しているかどうか調べるように指示された。よって追加実験として、MBNL1を過剰発現させた時の、異常なスプライシングアイソフォームと正常なアイソフォームの比をシークエンス解析で調べたところ、空ベクターを過剰発現させたものと変化がなかったため、MBNL1は上記のスプライシング制御とは別の経路でスプライシングを正常化していることを確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、AONとスプライシング因子による、ヒトのクロライドチャネルのスプライシングの正常化について、従来の方法より正確に測定できるスプライシングアッセイで計量を行った。しかし、マウスのクロライドチャネルの正常化は、exon 6とexon 7の間にexon 7aの1つのexonをskippingすることだけでよかったが、ヒトのクロライドチャネルの正常化は、exon 6Bとexon 7Aの2つのexonをskippingする必要性があり、AONによる効果がマウスに比べヒトだと弱い傾向が見られた。また、AONとスプライシング因子の過剰発現でのスプライシングの正常化について比較すると、スプライシング因子のMBNL1の過剰発現によるスプライシングの正常化が、AONの最も効果が高い配列に比べて高かった。したがって、ヒトのクロライドチャネルの正常化には、AONよりMBNL1の過剰発現のほうが効果的だと考え、従来より低侵襲性で体への負担が少ない方法でMBNL1を細胞内に入れる方法を模索することにした。 HIVウィルス由来の膜透過性ペプチドのTAT配列をMBNL1に融合したタンパク質を培養細胞の培地に添加して、自然と細胞内に入り、スプライシングを正常化させることができるか調べる予定である。また、通常のMBNL1を同じく膜透過性ペプチドと一緒に混合することで、細胞に自然と入っていく方法でも試す予定である。従来は、カチオン性の遺伝子導入を行っていたので、それらより細胞への負担は減少すると考えている。ただし、タンパク質とクロライドチャネルのミニジーンをどちらも細胞内に入れるのは困難なため、スプライシングは細胞の内在性の遺伝子で正常化しているかどうか調べる予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Splicing of human chloride channel 12016
Author(s)
Takumi Nakamura*, Natsumi Ohsawa-Yoshida*, Yimeng Zhao, Michinori Koebis, Kosuke Oana, Hiroaki Mitsuhashi, and Shoichi Ishiura.*Equal contribution.
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Journal Title
Biochemistry and Biophysics Reports (Elsevier)
Volume: Vol.5
Pages: 63-69
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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