2015 Fiscal Year Annual Research Report
変形性関節症治療への応用を目指したS100a1の関節軟骨保護作用の検討
Project/Area Number |
15H06169
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 芳史 東京大学, 医学部附属病院, 登録診療員 (60757954)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | S100 / 変形性関節症 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らが今まで行った研究で、S100a1のノックアウト(KO)マウスでは野生型(WT)に比し変形性関節症(OA) が悪化する事が判明している。これを踏まえて、本研究では、S100a1 発現低下がOA 病態へ関与する分子メカニズムのin vitro・in vivo解析を行い、さらに、S100a1 過剰発現によるOA治療への応用の可能性の検討を行う事を計画している。 in vitroの分子メカニズム解析では、初代培養細胞や軟骨系細胞株でsiRNAでS100a1発現を低下させ、あるいはレトロウイルスでS100a1発現を上昇させた。これらの細胞に対しOA病態を模した刺激としてメカニカルストレス・肥大分化刺激・炎症性サイトカインを加え、遺伝子発現・細胞外マトリクスの変化を観察した。しかし、現状ではin vivoのS100a1 KOマウスでのOA悪化を説明できる所見は得られていない。 以上の如くin vitroのみでの機能解析が行き詰まっている事から、機能解析の足掛かりとするため、in vivoでの遺伝子発現変化をまず網羅的に解析する方針とした。WTおよびKOマウスにOAモデルの手術を行い、継時的に関節軟骨を採取し、RNAを抽出した。今後、この検体に対してマイクロアレイ解析を行い、S100a1 KOマウスで、in vivoでOA刺激の際にどのような遺伝子発現プロファイルの差が出現しているかを評価する方針である。 また、in vivoでS100a1を過剰発現させ、OA進行が抑制されるかを観察する研究を行うため、S100a1-conditional Tgマウスの作出も行っている。こちらは現在F1マウスが誕生しており、数世代交配ののち、Col2a1-CreERT2マウスと掛け合わせて、関節軟骨特異的にS100a1を過剰発現するマウスを得たのち、OAモデルによる評価を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
in vitroで種々の検討を行ったが、S100a1とOAとの関連を説明する分子メカニズムについて、まだ有用な知見を得られていない。
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Strategy for Future Research Activity |
in vitroのメカニズムの解析が進んでいない状態であるが、これについては、「研究実績の概要」に示した通り、in vivoサンプルのマイクロアレイ解析を新たに行う事で、今までとは別角度からの知見を得たいと考えている。 メカニズムの解析と並行して、conditional transgenicマウスを用いて関節軟骨特異的にS100a1を過剰発現したマウスを用いて、S100a1の過剰発現によるOA治療の可能性を検討し、臨床応用に向けて有用な知見を得ようと考えている。
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