2015 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄小脳失調症31型における環状RNA生成とその機能の解析
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15H06181
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐藤 望 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 助教 (30754551)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | 環状RNA / non-coding RNA / Alu |
Outline of Annual Research Achievements |
長鎖non-coding RNA の一つである環状RNA(circRNA)は真核細胞内に数多く存在することが知られているが、数個の例外を除いてその機能は殆ど未解明である。circRNA の形成にはイントロン内のリピート配列が重要であることが示されている。他方、遺伝性神経変性疾患の一部はゲノム内の主要なリピート配列であるAlu に関連したmicrosatellite の異常伸長(expSat)が原因変異であることが知られている。脊髄小脳失調症31 型(SCA31)は上記のカテゴリーに属する疾患であるが、本研究ではSCA31を例に、イントロン内のAluから生じたexpSat がcircRNA 生成・分布・代謝に与える影響を培養細胞とヒト脳剖検組織検体を用いて検討し、circRNA の生成とその疾患における役割の一端を明らかにすることを目指した。 まずSCA31変異が存在するBEAN1, TK2遺伝子由来のcircRNAをヒト小脳検体、ヒト変異型BEAN1トランスジェニックマウス脳検体を用いて検出することを目指した。circRNAのデータベースであるcircBaseを参照しつつ、これらの遺伝子由来のcircRNAをRT-PCR法で検出することを目指したが、非特異的増幅が多く、BEAN1或いはTK2由来のcircRNAと結論づけられる配列は検出されなかった。この原因としては(1)BEAN1/TK2由来の環状RNAはごく微量であること、(2)BEAN1遺伝子はGC richであり、これ由来のcircRNAは増幅されにくいこと、などが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BEAN1或いはTK2由来のcircRNA (データベースにも登録あり)を検出した後にSCA31変異の影響を検討する予定であったが、ヒトおよびマウス脳サンプルではこのcircRNAの検出が困難であったため。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したようにBEAN1およびTK2由来のcircRNAは検出が困難であった。そこで本年度はSCA31変異由来のnon-coding RNAが他遺伝子のcircRNA生成、代謝に与える影響を検討したい。筆者はすでにin vitroでのRNA pull-down法によりSCA31変異の転写産物が結合するたんぱく質を複数同定している。これらのタンパク質は例外なくRNA代謝に関わるRNA-binding proteinである。一方、RNA-binding proteinの一つMBL/MBNL1の遺伝子由来の環状RNAはMBL/MBNL1のmRNA生成と競合的に生成されることが示されている(Ashwal-Fluss R et al, Mol Cell 2014)。即ち、あるタンパク質が遺伝子の転写・翻訳を経て合成される方向にあるときは環状RNA生成が抑制され、タンパク質が充分ある時にはmRNA生成が抑制される一方環状RNA生成が増加するのである。以上の知見からはSCA31変異由来のnon-coding RNAはその結合するRNA-binding proteinの細胞内での需要量に影響する可能性が考えられ、RNA-binding proteinをコードする遺伝子由来の環状RNA生成量に影響を与える可能性が推察される。 まず、SCA31遺伝子変異を培養細胞にtransfectionし、細胞内のSCA31変異が結合するRNA-binding proteinのmRNAや環状RNAを定量し、その変化を検討する。この知見をもとに、ヒト変異型BEAN1遺伝子トランスジェニックマウス、SCA31剖検小脳検体でも同様の所見が認められるか検討する。
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