2015 Fiscal Year Annual Research Report
アルコールによる心筋障害におけるHippo経路の役割
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15H06182
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
則竹 香菜子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任助教 (40758067)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | エタノール / 心筋障害 / Hippo-YAP経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰な飲酒は、心筋を障害し心収縮能を低下させることが知られている。アルコールによる心筋障害は、エタノールや代謝産物であるアセトアルデヒドが心筋細胞を直接障害するとされるが、その機序はいまだ不明な点が多い。我々は、自発的収縮能を維持したマウス心房由来のHL-1細胞を用いて、エタノールが心筋細胞に及ぼす影響について検討した。 エタノールを曝露したHL-1細胞では、エタノール濃度依存的にアポトーシスが誘導されることを確認した。また、心筋細胞間の接着装置であるギャップジャンクション、アドヘレンスジャンクション、デスモソームの破綻による細胞間情報伝達の障害、アクチンやビメンチンなどの細胞骨格の変性が起きていることを明らかにした。近年、がん抑制シグナルとして同定されたHippo経路は、細胞間接着などの物理環境を感知して細胞増殖や細胞死を制御していることが知られている。我々は、エタノールを曝露したHL-1細胞においてHippo経路が抑制され、標的である転写調節因子YAPのリン酸化が減少している事を見出した。Hippo経路の活性化剤投与によってエタノール誘導のアポトーシスが増加したことから、エタノールはアポトーシスを誘導する一方、Hippo経路を抑制することで再生応答を促し心臓の恒常性を維持していると考えられた。しかし、YAPの核移行が阻害されていることが観察され、心筋細胞の再増殖には至らなかった。以上のことから、エタノールによる心筋障害の機序について、細胞間接着や細胞骨格の破綻、Hippo-YAP経路の機能障害が関与することが明らかとなった。これら心筋細胞障害に対する内在性アセトアルデヒドの関与について、アルデヒド脱水素酵素ALDH2の阻害剤や活性化剤を用いて検討したが影響は見られず、エタノールの直接作用によるものであることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルコールによる心筋障害の機序にHippo-YAP経路が関与することを明らかにし、その内容を雑誌に掲載することが出来た(Noritake et al., PLoS One 2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
Hippo経路がRASやRhoなどの細胞内シグナル経路により制御されることや、またYAPの活性化は細胞の代謝状態によっても制御されている事が明らかになってきている。そこで、HL-1細胞または初代培養細胞を用いてマイクロアレイ解析やメタボローム解析などを行い、エタノールによるHippo-YAP経路の障害機構を明らかにする。
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Research Products
(4 results)