2015 Fiscal Year Annual Research Report
電子不足CpE錯体触媒によるカルボン酸C―H結合官能基化反応の開発
Project/Area Number |
15H06201
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
柴田 祐 東京工業大学, 理工学研究科, 助教 (30754494)
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Project Period (FY) |
2015-08-28 – 2017-03-31
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Keywords | ロジウム / シクロペンタジエニル錯体 / C-H結合官能基化 / カルボン酸 / イソクマリン / ピロン / アルキン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、独自に開発した高活性「電子不足CpERh触媒」を用いて安息香酸誘導体とアルキンとの温和な条件下でのC―H結合切断を経由する酸化的カップリング反応の開発を目的とした。 安息香酸とジフェニルアセチレンをモデル基質とし、反応条件(添加剤、溶媒、温度、時間)の最適化を行った。その結果、触媒量のCpERh錯体/AgNTf2/酢酸銅(II)存在下、ジクロロメタン中/室温/空気雰囲気下で酸化的カップリング反応が進行し、イソクマリン誘導体3が最も高い収率(98%)で得られた。一方、電子豊富なアルキンを用いたときに、収率の低下が観測された。これは、反応初期の平衡においてアルキンの強い配位により安息香酸の配位が阻害されたものと推察された。そこで、種々の添加剤や反応温度について検討を行ったところ、ジアルキルアセチレンに対しては酢酸ナトリウムを添加、電子豊富なアリールアセチレンに対しては反応温度を40℃とすることで、著しく収率が向上することを見出した。また、種々のヘテロ芳香族カルボン酸やアクリル酸誘導体についてもアルキンとの酸化的環化反応を検討した。その結果、安息香酸と同様に触媒量のカチオン性銀塩および銅(II)酸化剤存在下、空気雰囲気下・室温で炭素–水素結合切断を経由する酸化的環化反応が進行し、良好な収率でピロン誘導体が得られることを見出した。また、同様の触媒系を用いてDMF中反応温度を100℃とすることで、安息香酸と2分子のジフェニルアセチレンとの脱炭酸を伴う酸化的カップリング反応が進行し、多置換ナフタレン誘導体4が良好な収率で得られた。さらに、酢酸銀を添加することにより、若干の収率の低下が認められるものの、室温で反応が進行することを見出した。 さらに、新規環化反応によるフルベン類合成法の開発により、アミド部位を有する多様なCpロジウム錯体を合成可能であることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた電子不足Cp錯体触媒を用いたカルボン酸とアルキンとのカップリング反応が温和な条件下進行することを見出しただけでなく、新規Cp錯体合成法の開発について著しい進展があり、新規フルベン合成法の開発により多種多様な触媒前駆体を合成できることを見出した。実際に、数種類の置換基およびアミド部位を有する新規Cpロジウム触媒の合成に成功した。さらにこの触媒はアニリドのC-H結合官能基化反応に対し、既存のCp*錯体よりも高い活性を示すことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
電子不足Cp錯体のみならず、新規に開発した触媒を用いて芳香族カルボン酸誘導体のC―H結合官能基化反応を検討し、脱炭酸を伴うカップリング反応における配位子の影響について詳細に検討を行う。 具体的には、安息香酸とアルキン2分子との脱炭酸を伴う酸化的[2+2+2]付加環化反応のさらなる条件検討を行うとともに、基質適用範囲について詳細に検討を行う。 また、本反応による脱炭酸の知見をもとに、ビフェニルカルボン酸とアルキンとの脱炭酸を伴う酸化的付加環化反応によるフェナントレン誘導体の合成へと展開する。このような高度に置換されたビフェニルカルボン酸誘導体は、カチオン性ロジウム触媒による[2+2+2]付加環化反応により、ジインとフェニルプロピオール酸エステルから簡便に合成可能である。 さらにアセチレンジカルボン酸ジエステルの[2+2+2]付加環化反応により、高度に官能基化された種々のフタル酸誘導体が簡便に合成可能である。これらの基質を本研究課題で開発したアルキンとの酸化的カップリング反応に付すことにより、高度に官能基化された様々なπ共役分子の簡便な合成法を開発する。
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Research Products
(23 results)